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紬はリンとズルが撃たれた高官の男を治療しているのを横目に見つつ、ダンサーが話しているのを睨みながら警戒を続けていた。ダンサーは何か小難しい話しをしていると思ったので意味を深く理解して聞こうとはしなかった。
リンとズルの魔法による治療はうまくいったようだ。高官の服は血だらけだったが、止血もうまくいき、高官は横になりながら落ち着いた呼吸をするようになった。
そのときダンサーが空を指さした。
紬は自然な流れでダンサーが指さした上空を見上げた。
なんだろう。何も見えないけれど……。
あれ、あれはなんだろう。
キラキラと光るものがいくつか見えた。
突然そのうちの一つが大きな輝きとなって現れ、紬の頭上を超えて行く。紬は頭を振ってそれが進んで行く先を目で追った。その先には自由都市ビアノと呼ばれた都市が見えた。
キラキラと光るものは都市ビアノのほうへ飛んでいき、消えた。
しばらく何だろうと考える間があった。考えても分からない。紬はリンと見合って首を傾げ合ったりもした。再び都市のほうを見つめる。キラキラしたものが時折またたいて飛んでいくのが見えた。
次の瞬間、まばゆい光りが視界を覆い、反射的に紬は目を閉じた。目は開けられない。まぶたを閉じているのに白い光りに視界は満たされた。
少し光りが弱くなったと思い、目を開けると、都市は今まで見たことがないほどの大きな火球に包まれていた。
続いてキラキラ光るものが三つ、四つと都市に飛んで行くのが見えた。また光ると思って紬は目を閉じた。そして下を向いた。
それでも周りに光りが満たされるのが分かった。
稲光がパパパパっと輝く感じだ。
光りが弱まったと感じるまで長い時間が経ったように感じた。
紬が目を開けて前を見ると自由都市ビアノはさらに大きくなった火球に包まれていた。
大きな大きな火でできた山が現れて都市を飲み込んでしまったように見えた。
紬は火の山の中で蠢く怪物を見たような気がした。真っ赤な火球の中でいくつもの大きな怪物たちが暴れているように思えた。
怪物のように見えたのは錯覚だろう。しかしあの火球の中で大きな街が破壊しつくされつつあるのは分かった。
大きな火球の上部から信じられないくらい大きな灰色の煙が沸き立ち空に昇っていく。煙は昇りつつ膨らんだ。
その光景を誰もが呆然となって見つめていた。
紬の意識が周りを認識するようになって、女性が金切り声を上げているのが分かった。幾人かの男性はうめき声のようなものを上げていた。
たっぷり一分以上経ってから轟音が鳴り響き、地面が左右に揺さぶられた。
紬は何か確かなものにしがみつきたくなって両手で虚空をまさぐった。幸いすぐそばにリンがいた。リンの体を抱きしめた。リンもものすごい力で紬にしがみついてきた。地面に揺さぶられ、ふらつきながらもリンと紬はしっかりと抱き合っていた。そうしつつ、二人とも都市が煙に包まれている光景から目を離すことができなかった。顔を寄せ合い、それを見ていた。




