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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第六章 ダンサー
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 やがて飛行機は高度を落とし滑走路に着陸した。タキシングして駐機場に向かっている間、窓から外の様子を見たルチアノが騒ぎ出した。


「変だぞ。ここはビアネじゃない」


 正木たちも外を見た。荒野のまっただ中に着陸したようだった。周りには建物らしきものは何もない。


「どういうことだ?端末二七?」


 ルチアノはニーナに近寄って問い質している様子。


「あたしも分からないのよ。予定ではビアネの空港に着陸してから会議場に移動することになっていたんだけれど……」


「トピカに確認してみてくれ」


 ニーナの瞳は赤くちかちかと光った。


「トピカには繋がらない。ローカルブロードキャストコマンドは飛行機から降りて指示に従えと言っているから、とにかく降りてみましょう」


 ニーナは申し訳なさそうにルチアノに説明した。


「大丈夫なのか?ハク」


 正木は傍らにいるハクに訪ねた。


「ニーナの言うとおりです。到着場所は変更になったようですが詳細は知らされていません。正木さんの問いへの答えとしては大丈夫なのかどうか不明、です」


「ふむ……」


 正木は嘆息しながら考えた。


 仲間に目配せして近くに寄れと指示する。


 リン、つむぎ、デニ、ズル、リリーが正木を中心として集まった。


「飛行機を降りる前に武装。動的魔法フィールドを掛け合って銃弾からの防壁を付けよう」


 設置型の魔法防壁よりも効果は落ちるが動き回っても魔法フィールド防壁の恩恵を得られるように動的魔法フィールドをかけるように指示が出された。


 魔法使い冒険者たちは魔法ザックからそれぞれの武器を取り出した。リン、つむぎ、ズルは魔法の杖を。リリーは魔銃スナイパーライフルは出さなかったが魔法拳銃のホルスターを腰に付けた。


 正木とデニは魔法剣の鞘を取り出して腰から提げた。


 ハクが非難の視線を送ってきたが正木は文句は言わせないと言う感じで鋭く睨んだ。


「みなさん、タラップが設置されました。降りましょう」


 ニーナが声をかけてきた。機内の人々はぞろぞろと乗降口に向かった。


 つむぎは仲間と一緒にタラップを降りながら辺りの様子を伺った。


 荒野のまっただ中だった。


 つむぎたちが乗ってきた飛行機は離発着に長い滑走路という設備を必要とはしていなかったが、それが必要なものが以前はあったのだろう。それを備えた、大昔に遺棄された飛行場といった感じだった。


 少し離れたところに飛行場を見渡せるようになっている五階建てくらいの塔があった。あとでズルに教えてもらったが、それは飛行機の離発着を管理するための管制塔というものだった。


 ニーナの誘導についていくと、これもあとで聞いたのだが、鉄骨で組まれた仮設スタンドがあり、設置された階段を登って木製の座席に座ると見晴らしが良かった。


 スタンドの前には、いかにも即席で作りましたという簡易ステージがあった。


 雲がちらほら浮かんだ青空の向こう、スタンドの正面のかなり遠くにトピカのような都市が見えた。


 視界を巡らすと右手の奥には赤茶けた色の山脈が見え、左手の先はどこまでも続く荒野だった。


 つむぎは仲間たちと固まって仮設スタンドの座席に座った。つむぎの隣にはリンがいて、その隣にハクが無言でちょこんと座っている。


 すぐ前の席にルチアノとその随行の者がいて、ルチアノの隣にはニーナが座った。


「あれは自由都市ビアノだ。なぜ会議場のあるビアノまで行かなかったのだろう。ここで何か余興があるのか?」


 最後の言葉はニーナに向けられた質問だった。


「分からないの。指示はとにかくこの仮設スタンドで待機しろということだけ」


 ニーナはそう答えた。


 この飛行場跡地は少し小高い丘の上にあるようだ。仮設スタンドの高さも相まって見晴らしがよく、ルチアノが言った正面の遠くに見える自由都市ビアノまで、つむぎは四、五十キロくらいかなと目算した。


 ステージに一人の男が登壇した。


 背が高く体格が良く、チェック柄のグレーのスーツを着ていて、ワックスで撫でつけられた黒髪、がっしりとした顎の三十歳くらいの男だった。ルックスカスタマイズとやらをしているだろうから本当の年齢は分からないなとつむぎは思った。


 周りの各都市の高官たちがざわついた。


「あれはダンサー」


「ダンサーだ、久しぶりに見た」


 口々に言う。どうやら有名人らしい。


 ダンサー?あまり機敏に踊れるようには見えないけどなとつむぎは思った。


「ダンサー?あの人が今から踊るの?」


 隣に座ったリンが不思議そうにそう言った。


 前に座っているルチアノがリンとつむぎのほうに振り返って説明してくれた。


「ダンサーというのは通称でね。世界的な富豪として有名だった男だよ。トピカ建造に出資してから、表舞台からは姿を消していたと思う。彼の姿を見るのは十数年ぶりだよ」


「もうあだ名があるんなら考える手間がはぶけた」


 リンはそんなことを暢気に言った。

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