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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第六章 ダンサー
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「私も以前はルックスカスタマイズをしていた。しかし自分の生まれたままの姿でいようという思想を知ってね。レジスタンスが提唱したものなのだが」


 レジスタンスという言葉が出て正木は注目した。


「そのレジスタンスという組織について聞きたい。人工知能の支配に対抗するためにできたと聞いたが?」


 正木がルチアノに質問した。


「うむ。トピカを目の敵にしている連中だ。それでいて私の都市、ビアネというのだが、トピカとは敵対関係に近いのに、我々にもテロを起こしてくる。困ったやつらだよ」


「しかし、その思想は認められる点もあるのだな。なぜだ?」


「彼らが掲げている理想は理解できる点もある。機械を使いすぎるな。機械に支配されるなんてもってのほかだということだ。私がレジスタンスの思想に感化されているくらいだから、我らの都市はトピカと仲が悪いのだがな」


 ルチアノは苦笑しつつ、ここで声を落とした。


「彼らを見てくれ」


 そう言って別のグループ、他都市の高官たちが談笑しているほうへ目を向けた。若く見た目のよい男女の集まりだった。


「ルックスカスタマイズは良くできているが、画一的で、人工的な何かを隠せない。不自然だ。リンさんとつむぎさんを見ていると、彼らには全くない感情表現の豊かさ、情緒のオーラのようなものを感じて、とても魅力的だ」


 つむぎはそんな風に言われて少し照れて顔を赤らめた。


 ルチアノは言を続けた。


「レジスタンスの連中にも会ったことがあるが、彼らは暗くていかん。攻撃的すぎるところも問題だ」


「レジスタンスに会ったことがあると?どこで?」


 正木は静かに聞いた。


 ルチアノはちらりと近くに座っているハクのほうを見てから言った。


「なにか用があって彼らと会ったわけじゃない。たまたま居合わせたことがあるということだ」


「どういう組織なのかな。知っていたら教えてほしい」


「詳しくはないよ。みなが知っているようなことしか分からん」


 ルチアノはそう言ったが話してくれた。


「フェルミとアマンダという姉妹が求心力を持っているらしい。最初は地下アイドルとその取り巻きという感じだったようだが、彼女たちの作る歌、とくに歌詞に力があった。ルックスカスタマイズをやめようという思想も彼女たちが作った歌詞から生まれたもののうちの一つだ」


「他にどんな思想が作られたの?」


 つむぎが聞いた。


「いろいろある。男女平等、差別撤廃、監視社会反対、匿名主義、ネット接続抑制、電脳化抑制、機械化抑制。総じて自然主義的なものだったが打倒トピカを掲げてからは急速に武力闘争の色を強めて、他のテロ組織も吸収してしまった。今やレジスタンスと通称されるようにまでなった」


「トピカ以外の都市から資金が渡っているということも聞いたが?」


 正木が問うた。


 ルチアノはまたハクをちらっと見てから答えた。


「……自由都市ビアネを疑っているならお門違いだ。我が都市もレジスタンスには手を焼いているのだ」


「では、レジスタンスに協力している都市はないと?」


「そうは言っていない。レジスタンスの武器弾薬はかなり豊富だ。どこかの都市が資金を出しているほうに私なら賭けるね。この会議に出席している都市が裏でしれっと資金を出していても驚かないよ」


「そのフェルミとアマンダという姉妹に会ってみたいな」


 正木が静かに言った。


「私もだ」


 ルチアノも言った。


「最近の姿は一切出回っていないが、地下アイドル時代の彼女たちの姿はこの子たちのように可愛らしい」


 そう言ってリンとつむぎのほうを手で示した。


「見せてもらえるか?」


 ルチアノは頷いた。


 テーブルに左手を差し出した。その手は機械化されていた。手首のあたりがどういう仕組みなのか皮膚が開いて映像を出力する機械が覗いた。


 テーブルの上に非常に鮮明な立体停止画像が現れた。ピンク色の髪を長くなびかせた少女と、緑色の髪を肩まで揺らせた少女がマイクを片手に歌唱している姿だ。


 躍動感に満ちていて魅力的な可愛らしい少女たちだとつむぎは思った。


「今ごろどんな鬼の子になっているのやら」


 ルチアノが呟いた。

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