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科学文明探訪【Web版】  作者: 橋本禰雲
第六章 ダンサー
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 翌朝八時三十分きっかりに、ハクはコンドミニアムの玄関にやって来た。


 さすが機械でできた人間だ。時間に性格だわ。とつむぎは思った。


 朝の動きは性格が出る。


 まず、八時三十分の出発の時刻に、準備の時間なども考慮して間に合うように起床し、皆を起こして回ったのはリンだ。つむぎは真夜中にさみしくなってしまい、リンのベッドに潜り込んでリンの背中にくっついて寝ていたので最初に起こされる羽目になった。


「まだねむーい」


「起きて準備しないとだよ」


 起きてすぐに元気な声を出せるリンにそう言われて、朝が苦手のつむぎはふぁーいと空返事した。


 リンはパジャマのまま他の部屋を巡回して全員を起こした。


 リリーはすでに起きていた。朝のシャワーも済ませてさっぱりした様子でお化粧をしたり、ネイルをチェックしたりしていた。


 デニも意外だったが起きていた。上半身裸で朝の筋トレをしていた。


「三十分後に朝食にするね!ダイニングに来てちょうだい」


 リンが挨拶のあとにそう言うと、


「了解!」


 と腕立て伏せをしながらデニが答えた。


 ズルは爆睡していたので、リンはズルの体を揺らして起こさなければならなかった。


「ズル。起きなさい。時間だよ」


「うーん、あと五分だけ寝たい。あと五分だけ……」


「絶対だめ。はやく起きなさい」


 リンは容赦ない。


「今すぐ起きないと、あんただけ朝食抜きにするよ」


「うーん、うーん、わかったよぉ。起きるよぉ」


 仕上げは正木である。


 正木も起こすのに手間が、かかるほうだ。


 リンは正木の部屋に入って容赦なくカーテンを開けて朝の光を窓から取り入れた。とても良い天気で窓から青空が見えた。


「正木さま!おきてくださーい」


 リンが小さな体のときは正木の体の上に飛び乗って起こしていたものだが、十五歳の体になってからそれをやったときに物凄く怒られたので、やらないようにしていた。


「正木さまぁーー」


 リンが正木の肩を揺らす。


 正木は目を開けて寝返りを打ち、目を開けてリンを見た。何も言わない。


 そして、何も言わないまま目を閉じる。


 沈黙。


「正木さまーーー起きてくださーーい」


 正木は目を開ける。


 目を閉じる。


 それをあと二回繰り返したあと、やっと正木は半身を起こした。


「おはようございます。正木さま。朝食を作るので二十五分後にダイニングに来てくださいね」


「おはよう、リン。……分かった」


 リンは急いで自室に戻り、起こしたはずのつむぎが二度寝してしまっているのを起こしてから、ささっと顔を洗って着替えてキッチンに行き、朝食を作り始めた。


 トーストを焼いて、スクランブルエッグを作って、野菜を切って手早くサラダにして、ウインナーを軽く焼いて、ベーコンはカリカリに焼いて、ミルクを注いで、人数分の朝食プレートを作る。


 途中からリリーがキッチンにやってきて無言で手伝ってくれた。


 リンはにっこり笑って「ありがとう」と言ってから、あれして、これしてとリリーに矢継ぎ早に指示を出す。リリーはテキパキと文句も言わずに手伝ってくれた。朝食は魔法のように手早くできた。実際、火を起こしたりの魔法も使ったのだが。


 時間になってもダイニングに現れないズルを叩き起こしに行ったのもリンだ。


 というわけで、八時三十分、時間通りに全員がコンドミニアムの玄関に、出発の準備を整えてハクを迎えられたのも、ほぼリンのおかげだなとつむぎは感心した。

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