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ハクに促されて正木たちは飛行する機械に乗り込んだ。ズルは紬にこう教えてくれた。
「これは機械獣とは違って乗り物として作られたものですね。飛行機というのですよ」
その飛行機は翼が左右についていて、鳥の形に似ていたが機械獣のように獣として動き回るようにはできていなかった。翼をはためかせることはなく、翼の部分についている推進力を得る部品を使ってゆっくりと地上に着陸できる性能を持っていた。
魔法界にも大型の飛行鷲を使って十人ほどが乗る乗り合い航路を運用している星もあったが、紬が驚いたのは、この飛行機は胴体の中に乗り込むと内部は部屋のようになっていて、椅子が置いてあり、外を眺める窓もついていたりして、快適にすごせる空間になっていたことだ。しかも内部は広くたくさんの人数を乗せられそうだった。
機械の音が高まって飛行機は離陸した。
紬は窓の近くの椅子に陣取って外の様子を眺めた。
さきほどまでいた森は眼下に見えるようになった。森はすぐになくなり、その後は荒れ果てた土地が続いた。木々があまり生えておらず、乾いた土に背の低い植物が点在するような景色がしばらく続いた。
飛び立ってからすぐ、正木がハクに声をかけた。
「我々はおまえ達の国のものではない。他の星から来たのだ」
「その情報に関連する事象をトピカは予期していました」
正木はうなずき、
「おまえ達の国について、制度や状況について教えてほしい。そうすれば我々がおまえ達に害をなす存在ではないことを説明しやすくなるだろう」
ハクは目を光らせた。どうやら考えたり、何かと意思の疎通をしているときに、瞳の白い光がまたたくようだ。
「分かりました。トピカ了承。メトロポリスに到着したのち、裁定担当端末が同席の上で話をしましょう」
正木は満足げに頷いた。
それからは皆無言になった。
機械の推進音だけが室内に響いていた。
それにしても、と紬は思った。
この飛行機の中はなんて快適なんだろう。四方を機体の壁に囲まれた室内のようになっているおかげで風切り音は少ししか聞こえないし、魔獣鷹で飛んでいるときのような風圧とは無縁だ。
もしかして科学文明では魔法界よりも快適な生活を送っているのかもしれない。紬はそう考えることもできるなと思った。それは科学文明の存在を知ってから予期していなかったことだった。魔法が使えない人々は勝手に不便な暮らしを強いられているとばかり思い込んでいたのだ。
ズルが紬の向かいの席に座った。
「僕も飛行機に乗るのははじめてなんです」
「快適よね。箒や魔獣鴨、鷹なんかよりもよっぽど」
「そうですね」
ズルは笑った。
「しかも、なんだか、かなり速い速度が出ている気がするわ」
「はい・・・・・・待ってくださいよ、計ってみます」
ズルはなにやらポケットの中から魔具を取り出して魔法をかけながら辺りを見回す仕草を見せた。
「すごく速いです。音速に近いスピードが出てます」
「音速!?音の速さってこと?」
「そうです。時速1200キロにもう少しという感じです」
「それはどれくらいなのかしら……」
「魔獣鷹が重力を使って降下しながらの最大戦速が時速300キロくらいです。その四倍速いですね」
「すごい……」
空兵だった紬はもちろん魔獣鷹のスピードを知っていた。降下時のスピードは恐ろしいくらいなのだが、それよりも四倍速いというのは信じられないくらい速いということを意味していた。
「でもこの飛行機そんなに軽くはできていないと思うのだけれど」
「そうですね。人もこんなに乗ってますしね」
科学文明の機械の力、恐るべしだと紬は思った。
「そうだ。星と星の距離を表す光年の話し。今なら理解しやすいかもしれない。説明してみましょうか」
ズルが提案した。
「お願いしたいわ」




