濡れてる女子はちょっとエッチです(過去)
◆ 天海浩介 ◆
午後から降りだした雨は次第に強くなり、放課後を迎える頃にはグラウンドに池を成すほどになっていた。
殊勝な心がけがあるわけでもない僕は置き傘はもちろん、折り畳み傘すらも持ってきていない。
走ればギリ……さすがに無理か……。
周りの音をかき消すほどの雨音は一向に弱まる気配を見せない。
中には腹をくくって校門へ走り出す者もいたがすぐに何かをあきらめたように足を緩めてる。
内心そりゃそうなるだろうと思いつつも僕もいつまでもこうしてはいられない。
学校に貸し傘とかあるかな、なんて考えているとちょうど彼女である水無瀬さんとその一行が談笑をしながら下駄箱の方からでてきた。
すると水無瀬さんも昇降口で立ち尽くす僕に気づいたようで目がばっちりと合う。
気恥ずかしくなり視線を逸らした先で水無瀬さんの手に握られた傘が目に入り、僕は一つの妙案を思い付いた。
水無瀬さんの傘に入れてもらおう。
なに、彼氏が彼女の傘に入れてもらうなんてなにもおかしな話じゃないし、遠慮する話でもない。
ただ一言、「傘忘れたから入れて」っていうだけだ。
だけど、僕はその一言を言う勇気を出すことができなかった。
気が付けば僕は傘を差し、てくてくと校門へ歩いていく水無瀬さんの背中をなさけなく眺めていた。




