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別れた元カノがうちのメイドになった件  作者: 雨宮桜桃
第3章
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幼馴染みと過去の決意

◆ 米田樹 ◆


 俺と敏子は幼稚園を入園してから小学校を卒業するまでずっと同じクラスだった。

 家が向かい同士なこともあり、お互いの家を行き来することはしょっちゅうで毎日のように放課後は遊んでいた。

 だけど、いくら幼馴染みだからといっても小学校の高学年にもなると周囲の目を気にし、男女の壁というものができる。

 敏子の方は気にしてなかったみたいだけど俺は気にした。

 学校では苗字で呼び、話すことさえほとんどなくなった。

 中学に上がり、クラスが分かれてからは1日姿を見かけないなんてことはざらだった。

 ……だから俺は知らなかったんだ。


「アンタ、敏子ちゃんのことでなんか知ってることある?」


 夕食時、母ちゃんが前置きなしに聞いてきた質問に俺は首を傾げる。


「敏子のことって?」

「アンタ知らんの? 敏子ちゃん学校ではみのけにされて今休んでんねんで」

「……いや、知らん……」


 本当に知らなかったんだ。学校で敏子がはみのけ――即ち、仲間はずれにされ、()()()られていたなんて。

 だが思い返してみれば、休み時間のたびに他クラスの俺に話しに来たり、毎日のように一緒に帰ろうと誘ってきたり、あれは敏子がクラスに馴染めていないという示唆で敏子なりのSOSだったのかもしれない。

 それなのに俺は気恥ずかしさから露骨に煙たがるような態度をとって……。

 そう思い至ると途端に罪悪感が押し寄せてきた。

 もし俺が敏子の話をちゃんと聞いていたら、SOSに気づけていれば……。

 クラスに馴染めるかはともかく、敏子が不登校になるという最悪は防げたかもしれない。

 小さい時から一緒にいたのに。

 敏子はもちろん、敏子のお母さん(おばさん)にも申し訳なくて合わせる顔がない。

 その翌日から俺は無駄に広い交友関係をフル活用し、情報を集めた。

 そしてわかったことが2つ。

 まず1つ目。これは敏子のクラスメイトや知り合いの女子から聞いた話で、敏子を仲間はずれにしていたのクラスメイトの女子数人。小学校からの顔見知りがほとんどで、リーダー的な女子も5、6年の時に同じクラスだった子で当時から気の強い子だったのをよく覚えている。

 そして2つ目。敏子が仲間はずれにされた原因。これは実際にいじめていた本人たちに聞いたわけじゃないから真意はわからないが敏子の言動――ぶりっ子(例えば一人称があかりだったり)が癪に障るのだとか。まあぶりっ子というかただ小学生の頃から成長していないだけだと思うが、これは俺の主観。

 そしてもう一つ。これは俺も前から薄々気になっていたことだが、圧倒的に場の空気が読めないこと。

 女子社会というのを俺は詳しく知らないが、よく聞く話だと敏子のそれはイジメの火種になるには十分なのだろう。

 情報は集めた。さてあとはこれを先生に告げて解決を待つだけ。

 俺は名探偵にでもなった気分だった。これで敏子はまた学校に来れるようになるだろう。

 だけど、そんな俺の考えは甘すぎた。

 何百人もの生徒を抱えている学校で一人に割けるリソースなんて微々たるものだ。たとえイジメで不登校なった子がいたとしても最低限の調査と生徒のメンタルケアはするが、警察が行方不明者を見つけるまで探し続けるなんてことが出来ないように、どこかで見切りをつけなくてはいけないのだ。

 後日呼び出され先生から告げられたのは俺がイジメをしていたといった女子たちは皆、犯行を否定。他のクラスメイトにも聞いたがイジメの現場を直接見た人はいないとのこと。

 そりゃいじめてた側はしてないと主張するだろうさ。

 しかもいじめが陰湿に(おこな)われていたなら堂々とイジメの現場を見たとは言いづらいだろう。

 だけど俺が集めた情報も結局は人伝。決定的な証拠ではない。

 それに加え、いじめられている当の本人の敏子は欠席の理由を体調不良が長引いているからと言っているらしい。

 先生は今後気にして見ておくとは言っていたが敏子は今学校に来れていないのだから今後ではなく今何とかして欲しい。だけどこれは俺のわがままだ。

 結局、敏子は中学1年の間ほとんど学校には来れず、2年になってからは積極的に俺や俺の友達の女子グループが接するようにし、少しずつ学校に来れるようになった。だけどそれはこの問題が解決したわけではなく、いわば逃げの一手。

 敏子は気丈に振舞っているが以前のように心の底から笑えているかは分からない。


 そして高校受験が近づき、三者面談の時。


「俺、敏子と同じ高校に行くよ」


 今の高校も特別頭が悪いわけではないが俺の成績的にもうワンランク上の高校の受験を勧めてきた担任の反対を押し切り俺は敏子と同じ高校に進学先を決めた。

 敏子がワンチャン落ちたかもと言ってきた時は肝を冷やしたが二人とも何とか合格が決まり俺は改めて決意した。

 高校では中学の二の舞にならないよう敏子のそばで道化でもなんでも演じてやる。

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