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別れた元カノがうちのメイドになった件  作者: 雨宮桜桃
第2章
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1番になりたくて①「……体育祭を開催します」

◆ 天海浩介 ◆


 梅雨時期だというのに今日は今年一の快晴らしい。

 お昼頃には最高30℃になると今朝の天気予報で言っていた。


「これより第17回体育祭を開催します。選手宣誓!」


 狩屋さんの開催宣言と応援団総団長の選手宣誓で始まった体育祭は序盤からハイボルテージ。

 みんな自分の団を声を張り上げ応援している。

 そんな中僕はというと、体実で早朝6時半からグラウンドに集まり機材の運搬をさせられ、体育祭が始まってからは競技に使う道具のセッティングを行い、既にヘトヘトである。

 幸い僕の参加する競技は玉入れと綱引きで比較的ライトな競技である上にプログラムの順番もお昼休憩後なのでこれから少しゆっくりとできる。

 仕事を終え、体実から解放されたのはいいが、一体これからどうしよう。

 体育祭の勝ち負けにそこまで興味が無い上に段々と気温も上がってきている。どこか涼めるところに行きたいが体育祭中、校舎は立ち入り禁止になっており、室内で涼むのは難しそうだ。

 とりあえず人の少ない所に移動しよう。

 グラウンドを出て人気のない体育館側へ、テニスコートの脇を通り抜けやって来たのはプール横の日陰のベンチ。


「ふぅ、やっと座れる」


 朝から立ちっぱなし・歩きっぱなしで疲労していた膝がもう立ちたくないと僕に訴えかけてくるのがわかる。

 暑い暑いとは思っていたけど清々しいほどの快晴だな。

 改めて自分が空を見る暇もないほど(せわ)しなく働いていたんだと自覚した。

 それからしばらく体の思うがまま休息を取っていると、突き当たりの奥――体育館裏からなんやら話し声が聞こえてくる。


「かっちゃん、私応援団頑張るから観ててね!」


 体育祭×人気のない体育館裏。

 まあこんなイベントにも遭遇するわな。

 いわゆる体育祭マジックというものを目撃してテンションが高ぶる反面、告白現場を覗き見してしまったということに若干の申し訳なさも感じる。

 そういえば中学の時にクラスのお調子者が体育祭でMVPを取った勢いそのままオーディエンスを集めて学年のマドンナに告白して成功してるやついたな。

 ……まあ次の日人気のないところでこっそりと別れを告げられたらしいけど。

 噂によるとそのマドンナ()はオーディエンスの同調圧力に屈してイエスと返事をしたけど本当はお調子者(そいつ)のことが嫌いだったとか。

 ――人間関係って怖いねぇ。

 そんなことを考えながらまた空を眺めていると、


「お、いたいた! こーすけー」


 呼ばれて顔を向けると米田と明里さんがこちらに歩いてきている。


「探したんだぞ。こんな所で何してんだよ」

「休憩」

「休憩? まあいいわ。もうすぐ水無瀬さん走るから応援行こうぜ」

「ん、ああ」


 よいしょ、っと……。


「あれ?」

「ん? あまみんどうしたの?」

「…………膝が固まって立てない…………」


 どうやら僕の膝は休憩の間に眠ってしまったらしい。

 結局僕は米田と明里さん(2人)に引っ張られながらグラウンドへと向かったのだった。

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