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別れた元カノがうちのメイドになった件  作者: 雨宮桜桃
第2章
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それぞれの試練

◆ 天海浩介 ◆


 週明け――先週受けたテストもぼちぼち返ってき始め、校内の空気は着々と体育祭へと向かっている。

 まあ、前の席でさらにその先の夏休みの補習確定に嘆いている明里さん(ひと)もいるが……。

 どうやら今日返ってきたテスト4教科中3教科が赤点だったらしい。

 そういう僕も平均点の一回り上の点は取れているものの目標にしていた学年50位以内は望み薄である。

 高校受験ぶりぐらいにちゃんと勉強しただけに少し悔しい思いはあるが、1年生の時に比べると点数も順位も飛躍的に上がっている。今回はいきなり50位以内という目標が無謀だった。

『目標は段階を踏んで』これを今回の教訓とすることとしよう。





◆ 水無瀬紗弥 ◆


 今日から先週決めたグループ単位での練習が始まった。

 グループは5~6人で構成されていて、そこに団長か副団長がリーダーとしてグループをまとめ、指導する。

 私のグループは私含め2年生の女子が2人と3年生の男の先輩が1人。それに1年生の男子が2人。そしてリーダーの香澄先輩。

 真央と明里と違うグループになってしまったのは残念だけど顔見知りの先輩がいるのはなんだか心強い。


「それじゃあ早速練習やっていきたいんだけど、みんな先週LINEのグループに送った動画は見てきた?」


 動画というのは実際に団長と副団長達がダンスを音楽に乗せて踊っている――平たく言えばお手本のことである。


「じゃあまずは出だしのところからやっていこうか。今からお手本を見せるから見てて」


 香澄先輩は自分で拍をとりながら私たちに踊りをしてみせる。昨年も思っていたけど香澄先輩はダンスが上手い。靭やかさの中にキレがあって指先から足先まで意識して踊っているのがわかる。


「と、まあこんな感じ――それじゃあやってみよっか!」


 

「――1・2・3・4・5・6・7・8……うん。みんなだいぶ出来てきたね」


 香澄先輩の指導の甲斐もあり私たちは1時間ほど練習でまだまだ低クオリティなもののサビ前までを通して踊れるようになった。


「1日目でここまで踊れたら上出来でしょ。じゃあ最後にもう1回通しで踊って今日は終わろっか」


 まだ初日ってことでみんなに無理はさせないという香澄先輩の考えもあるんだろうけど練習を終わりには早すぎる時間。部活動の生徒だってまだ帰っていない。

 体育祭本番まであと1ヶ月弱。

 時間はあるようで全然ない。

 もっと上手くならないと。

 天海くん……今頃何してるだろう……。





◆ 天海浩介 ◆


 今日は体育祭実行委員2回目の招集日だった。

 どうやら今日は体育祭のスローガンを決めるらしい。けれど前で会議を仕切る狩屋さんの顔は浮かない顔をしている。

 その原因はスローガンが一向に決まらないからだ。

 会議が始まって1時間が経った。そもそも30分遅れで始まったこの会議は開始から雰囲気が最悪だった。

 3年の先輩が遅刻してやってき、会議が始まってからもスマホをイジって大声で談笑をしている。

 狩屋さんがスローガンの案を募ろうにも誰も手を挙げず、ただ時間だけが過ぎていく。

 うちの学校は生徒の自主性の尊重するとかなんとかでこういうイベント事では基本先生は要請がない限り干渉してこない。


「あの……先輩たちも何かスローガンの案を出してもらえませんか……」

「あ? なんか適当でいいんじゃないの? ほら、英語の有名なやつあったじゃん。1人はみんなのためーみんなは1人のためーみたいなやつ」

「あったあった! えーと、ああこれだこれだ。ワンフォーオール・オールフォーワンだって」

「いいじゃんいいじゃん。なんか青春してますぅって感じがしてさ」


 昨日は困ったら助けるなんて言っていたが先輩は適当に笑い話をしているだけ。

 そんな中、大人しそうな3年生の女子が小さく手を挙げた。


「は、はい! 何か案ありますか!?」

「あの……私もうすぐ塾なので先抜けさせていただいてもいいですか?」

「えっ……」


 それを皮切りに他の生徒も手を挙げ帰宅を申し出始める。事態はすぐに進み、狩屋さんが引き止める間もなくみんな次々と教室を後にしていく。


「なんか終わったっぽいぞ」

「なら俺たちも帰るか」


 そうして残ったのは狩屋さんと数名。

 しばらく静かな時間が流れたあと狩屋さんは顔を上げ、残って数人に貼り付けたような笑顔で解散を宣言した。

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