50位以内を目指して③「バカに勉強を教えるなんて時間の無駄」
◆ 米田樹 ◆
こーすけが帰ったあとスマホを見ると母ちゃんから連絡がきていた。どうやら今日も仕事で遅くなるらしい。晩飯を敏子の家で食べさせてもらいなさいだと。
俺としてはコンビニ飯でもいいのだが、俺に栄養バランスの良い飯を食べて欲しいという親心なんだろう、それは禁止されている。
「6時過ぎか……」
ぼちぼちいい時間だな。
敏子ん家の夕食は6時半頃に食べることが多い。
ポケットにスマホだけを突っ込んで家を出るとものの3秒で着いた。お向かいさんなんでね。
「おばさーん、お邪魔します――」
家に上がると奥から「はーい」と返事が帰ってきた。どうやらちょうど晩飯の支度をしてるらしい。
敏子はリビングのソファーでスマホとにらめっこをしている。
「あれ? 寝坊助の樹じゃん」
「なんか用かよ、アホの敏子」
「誰がアホじゃい!」
「ほんと、毎回赤点ギリギリでこっちが頭抱えてるのよね。樹くん、敏子の勉強見てあげてよ」
「ちょっとママ!」
「バカに勉強を教えるなんて時間の無駄なんで」
「樹!」
うるさい敏子はほおっておいて俺は完成した飯を食卓に運ぶ。今日はチキン南蛮か。
それから他愛もない話をしながら晩飯を食べ、食べ終わると俺は帰宅した。
手早く風呂に入り、部屋に戻ると俺は机に向かう。
「さて、勉強しますか――」
数学の問題集を開き、それをさっさと解いていく。
俺の座右の銘は『天才は影で努力するもんだ』、だ。




