EX2-2「迷子」
癒子が迷子になった。悠斗といっしょに縁日を歩いていたはずなのに。
「もしもし? 癒子? おまえなあ、なんで一瞬目ぇ離しただけで迷子になるんだよ」
『~~~~~~~~』
「え? なに? 周りがうるさくてよく聞こえない!」
『~~~~? ~~……~~!』
「わかったわかったっ、メッセ送るから!」
屋台たちの裏手へ下がって、メッセージを送る。
『どこいる? オレが向かうから動かないで待ってろ』
返答はテキストではなく写真だった。
御神木が近くに見える屋台の前で、かき氷を掲げた癒子の自撮り写真である。
『余裕あるなおい』
『大学生にもなって迷子になったので、頭を冷やそうかと』
悠斗はかき氷頭痛でもないのにこめかみを押さえながら、御神木のそばの屋台へ。
しかし、そこに癒子はいなかった。
「あれ? いないじゃん」
「おう兄ちゃん! べっぴんのカノジョから預かりものだよ!」
と、店主からはちみつレモンのかき氷を差し出された悠斗である。
「は? ……おっちゃん、無表情のぽわぽわした女の子がここで待ってませんでした?」
「んああ、その子その子。そわそわした男の子が来たら待つように伝えてくれっつってどっか歩いてったけど」
「あいつっ」、何をやっているのかと呆れながら悠斗はケータイを取り出した。
ちょうどその時、また写真のメッセージが届いた。
祭り運営本部のテント下で、またも癒子の自撮り写真である。
なぜか彼女のそばにはベソをかいた小さい子がいて、気を紛らわせるような調子で一緒に写真を撮っていたらしかった。
『ごめんなさい。迷子のこの子を助けてました』
『自分も迷子だってのにおまえな。エラいな』
『ありがとうございます』
『運営のテントね、今度こそ待ってろよ』
迷子のアナウンスが放送されはじめたなかを、悠斗は運営本部へ。
「ああ、この子のお兄さん? え、違う? 探してるのはあの女の子? ……御神木のほう歩いてったけど」
「あいつぅっっ」、悠斗は迷子の子に両親が駆け寄ってきたのを横目にケータイを取り出した。
またまた写真が届いた。
……かき氷屋台の前で、首を傾げている癒子の自撮り写真である。
『なんでかき氷のとこ戻ってんだよ!? 待ってろって言っただろ!』
『だから最初に言われたここに急いで戻ってきたんですけど……。悠斗さんも迷子ですか?』
境内の入口へいったん出るように待ち合わせすればよかったのだと、気づいたのはあと2回すれ違ってからだった。




