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EX2-1「お参り」

 看谷 悠斗は己己己己 癒子とともに駅を出た。

「いやあ……どっか遊びに行くってなると地元に帰ってきちゃうオレたちな。夏祭りぐらい大学の近くにもあるのに」

「中学から毎年欠かさずお参りしてますから」

 宵の口の時頃。大学近郊から地元まで帰ってきて、駅近の神社の夏祭りにやって来たのだ。

 相変わらず、癒子は浴衣にぽっくり姿で髪を結い上げていて。対して悠斗はシャツにズボンと相変わらず味気ない。

「じゃあ行くか。神様のためのお祭りなんだから、お参りの前に屋台に寄り道するのは失礼……だったよな?」

「そのとおりです。ぐぎゅるぅ」

「腹の音を自分で言うなって」

 社殿までのそう長くはない参道へ。

 中学生とかの頃より2人とも背が伸びたからだろう、人混みに埋もれてしまうような圧迫感はもうほとんど感じなかった。

(学業と縁結びの神様、か。……こうやって毎年来るのがお決まりになったのも、ご利益ってやつなのかな)

 鈴を鳴らして。お賽銭を投げ込んで、二拍手。2人揃って手を合わせて、祈って。

(単位がもらえますように。バイトの時給も上がりますように。……あとは……)

 願い事なんて、中学生の頃からほとんど変わっていないかもしれない。

 なぜかこれも恒例になってしまったのだが、他の参拝客のように縁日へ直行せずに社殿の脇の大絵馬前で一息。

「大学生になっても、癒子の願い事はやっぱり無病息災? おまえに言わせたら個人的な願い事はしないんだろうけど」

「そうですね。お参りは土地を見守ってくれてる神様に感謝するものですから」

「はは。耳タコだな」

「毎年、感謝の気持ちを伝えてますよ。……毎年、悠斗さんとお参りに来れるご縁をありがとうございますって」

「……。初耳、だな」

「耳、赤いですよ」

 悠斗は「蒸し暑いから!」、癒子から渡されたうちわで顔をあおぎまくった。

「ていうかこのお参りは、オレの夏休みの自由研究から始まったやつだろ。べつにご利益とかじゃないじゃん」

「そういう偶然も含めて縁っていうんじゃないでしょうか? あ、それに……」

「それと……おまえと付き合うようになったのまで神様のおかげにされたら困るし」

 癒子が言葉を続けかけていたのだが、どうしても言っておきたかった悠斗は緊張からつい遮ってしまった。

「……あ、わ、わるい。何か言いかけてたよな」

 照れ隠しから投げかけても、それはあまり意味が無かった。

「はい、言おうとしてました。……私たちが付き合うようになったのは私たちがガンバったからですよ、って」

 癒子はもう笑っていたから、隠すもなにもなかったのだ。

「縁はきっかけですから。これまでもこれからも、どうなるかは私たち次第ですね」

「……ぉん。まあそれは、大丈夫じゃないか?」

「頼もしいですね」

 悠斗は「茶化すなよ」と、大絵馬に描かれた神様を見上げるのだった。

(これからもこんな幸せを続けていけるように、って願っといたしな。後押しくらいはしてくれるだろ)

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