16-2「流れるプール」
「ちゅうわけで~、バレー対決は金城&黒瀬ペアの勝利ぃ!」
「……………………(息も絶え絶えに巨大ゴムボールにしがみついている)」
「足の付かないプールでやるもんじゃあないと思うなーボクはー」
「うん、バレーじゃなくて水球だったね」
「あー疲れた、流れるプールでのんびりしようぜ。みんな浮き輪とかボート持ってたよな」
「いいですね。みんなでプカプカっとガボゴボゲボ」
「己己己己ぃぃぃぃ!? 上がってから喋れって!」
油断して沈んだ己己己己をサルベージして、看谷たちは流れるプールへ。
楕円形のコースが場内のほぼ全体を横断していて、浮き輪などに乗っていればゆっくり歩くほどの速さで漂える。
「勝負しないかー? 漕ぐの禁止で流れに身を任せー、先に1周できたら勝ちってことでー」
「ええで! 浮き輪から落ちたら失格な!」
「のんびりしようって言ってんのにおまえらさあ」
そんなわけで思い思いの浮き具に乗って、「よーいドン」と水を蹴った。
とはいえ、それからはのんびりとした時間だった。
黒瀬は安藤を浮き輪から蹴り落とそうとして返り討ちにあっていたし。
ゴムのイルカとかシャチに乗っていた金城と戸高は、きゃっきゃとガールズトークに笑っていたし。
交流のある友達の友達とはいっても、やっぱり異性同士で遊んでいる気恥ずかしさが顔を出すのだろうか。けっきょく、学校で見るような組み合わせになりがちだった。
(ふふふ……己己己己め、1人勝ちはさせないぞ)
「ぽへー……」
そして看谷は流れるプールレースに誰よりも真剣に向き合い、首位を独走中の己己己己のゴムボートを見据えていた。
彼女がもうすぐ到達する地点では、プールサイドからシャワーヘッドのようなパイプが伸びていた。
そこからプールへ注がれる水流を浴びた人々は、誰も彼もが「冷たい!」と震え上がっていた。
(あの冷たい水を食らったら、おまえみたいな最弱保健委員は浮き輪からひっくり返るだろうな)
実体験から言うのだから間違いない。光合成していた己己己己が冷水パイプに気づいてそちらを見つめた。
そして、「ふう」と一息吐いたかとおもうとゴムボートの上に正座した。……看谷は「ん?」と1人ざわついた。
周りを見回した己己己己と、間違いなく目が合ったからだ。
ニッコリ。ペコリ。
微笑と会釈だけ送ってくると、冷水パイプ行きを抵抗するでもなくそちらを見据えた。
ジーッと。肩をキュッとすくめて、たぶんそれで覚悟を決めて……冷水へ身構えているつもりで。
「……。…………っ、あああもお!」
看谷は浮き輪から飛び降りると水の中を走っていった。
「避けようとかしろよせめてぇ!」
「あうっ、看谷さん?」
ゴムボートへタックルして己己己己を逃がしたら「冷たぁっっ!?」、冷水パイプの下へ頭から突っ込んだ。




