2-2「体力テスト」
己己己己は自他共に認める虚弱貧弱最弱保健委員である。
机の角に膝が負ける。1階分の階段を駆け下りただけでスタミナが尽きる。何があったものやら、セーラー服から体操服に着替えるだけで保健室に搬送されたりもしたらしい。
「お待たせしました。看谷さんがまだペアになってないって先生に聞きました、私も出遅れたのでちょうどよかったですね」
「……なんで着替えてくるだけで頭に湿布貼ってくるんだよ」
体育館にて。看谷と己己己己は、8つの項目が並んだ記録カードを交換しあった。
体力テストの始まりである。
『上体起こし』。
「あうにゅっあうにゅっあうにゅっあうにゅっ」
「小刻みに暴れるな小刻みに暴れるな! てか足じゃなくて上半身上げろって!」
記録、0回。
『握力』。
「せー……の、あうっっ」
「あっっぶなぁ!? 測定器振り回すなよ!」
「遠心力が乗って弾みになればって……」
「乗ったとしてもズルだからアウト!」
記録、3.2kg(中1女子平均の約7分の1)。
『ボール投げ』。
「あうっっ」
「また顎ぉぉ! 真下に投げるからそうなるんだろっ……」
記録、0m。
『長座体前屈』。
「……その、ファッションモデルみたいなポーズはなんだ? 手をこの台に置いて押すんだぞ」
「力んだ、ら、らら、くびゅ……首がツりました、ちょっといまは話しかけないでください」
記録、0cm。
『20mシャトルラン』。
「す、すごいな己己己己……52回、まあ女子の平均並みなんだけどさ。後半の脅威の粘りは体育館中が釘付けだったぞ…………走るゾンビみたいで」
「……………………」
「己己己己?」
「……………………ビクン、ビクンビクンッ」
「己己己己ぃぃぃぃ!? ちょ、マジのヤツこれマジのヤツか!?」
「ゾン、ビ……あう、あう、ど、どどどどこですかゾンビはダメですゾンビはゾゾゾゾゾビクンビクン」
「わりと元気だな」
他の項目はいろいろな意味で測定不能となった。