16-1「市民プール」
夏休みもとうとう最後の週。
『というわけでいっしょに行きませんか? 金城さんが、『夏休みゆうたら水着回やろ』って』
海や川ならかなり遠いが、水着を着られる……もとい泳げる場所は隣町にあった。
ウォータースライダーのタワーが目印の、市民プールだ。
「ちゅうわけでやって来たでぇーっ、市民プールぅ! きゃーー!」
「夏の終わりを迎えてテンションおかしくなってるね」
「金城さんの宿題、ほとんど残ってますもんね」
金城、戸高、己己己己 癒子の女子グループが、入場前のシャワーゾーンを駆け抜けてプールサイドへ。
金城は大胆なクロスデザインビキニで、パレオを腰に巻いたエキゾチックな装い。
戸高は大きすぎないフリルに包まれたハイネック水着に、ラッシュガードのパーカーを羽織って。
そして己己己己は。競泳水着らしくシャープなもの……と見せかけて、ゆるふわリボンをふんだんにあしらったワンピース水着。
というわけで当然のことながら、3人ともスクール水着ではないわけで。……各々の好みがキラめく水着なわけで。
「看谷さーん」「黒瀬~」「安藤くん」
「よ、呼ばなくても見えてるって!」「……………………(負けじと手を振り返している)」「はいはいー」
看谷 悠斗、黒瀬、安藤の男子グループは、似たり寄ったりな海パン姿で女子たちを待っていた。
(くそう。己己己己と2人きりじゃないから大丈夫って思ってたけど、メチャクチャ恥ずかしいぞ)
無口な黒瀬とお気楽な安藤は何を考えているのかわからないが、少なくとも看谷はドギマギしていた……。
見知った女子のスクール水着姿だけでも慣れるのに苦労したのに。
もっと攻めたカッコをしているそこらの年上ギャルを見たって、ここまで落ち着かなくはないだろう。
「それじゃ、そっちも楽しんでね。解散!」
と、戸高の号令で女子たちが背を向ければ男子たちは「「「ん?」」」、目を点にした。
「んー? おーいちょっとーお嬢さんがたー。いっしょにプール来ようって話じゃあなかったかいー?」
すると女子3人もきょとん顔で振り向くのだ。
「せやからいっしょに来たやん? あんたらもプール行くかもて聞いたから、せっかくやし日にち合わせたんやで?」
「男子といっしょにプールで遊ぶのは、ちょっと恥ずかしいかなあ。でしょ?」
「……………………(名状しがたい顔をしている)」
「はあああ!? 己己己己おまえっ、オレをからかうつもりでメッセ送ってきたんだな!?」
「えっと。私は……」
「……ぷっ! あはははははっ、冗談やんかぁ冗談!」
金城が膝を打つと、己己己己へ詰めよっていた看谷はギョッとした。
「というか看谷くん、みんないるのに『オレを』って。よっぽどいつもからかわれてるんだね、ふふふ」
「コレ思いついたんのも戸高ちゃんやしなぁ。えらい幸せな風評被害やなぁ己己己己ちゃん」
「いえいえ、私の修業が足りないせいで看谷さんをつい困らせちゃうのです。押忍です」
「なぁんだー、つまり看谷のせいかー。んじゃあしょうがないわなー」
看谷は「なんでそうなる」と脱力したが、黒瀬にまで自首を勧めるように肩をポンポンされるのだった。




