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最弱保健委員の己己己己さん  作者: 古丹那 リタ
第15話(8月第3週)
48/55

15-3「くじ引き」

「あーー、くじ引きやりたい……! でもロクなもの当たったことないしなあ、一瞬で300円消える悔しさがスゴい」

「くじ引き、やりましょうよ。せっかく2人でいるんですから」

「人数はべつに関係無いだろ」

 軍資金がそろそろ寂しくなってきたが、看谷と己己己己は夏祭りの縁日をじゅうぶん満喫していただろう。

「んー、じゃああの屋台でいいか? 1等にピーステ5あるし」

 2人が歩いていったくじ引き屋台では、見るだけで射幸心が煽られる最新ホビーの数々が並べられていた。

 そこでは、店主があるパフォーマンスをしていた。

 カゴに広げられたくじを1枚取り出して捲れば、なんと1等が出たのだ。

「ほーらどうだい、ちゃんとアタリも入ってるだろ? 袖にも隠してないぞ、ご覧のとおり半袖だからねガハハ」

(胡散臭いなあ。アタリに目印でも付いてるんじゃないか? じゃあソレを見抜けば1等でも……)

「ストップです看谷さん。そんなに簡単なことじゃないですよ」

 店主の前へ引き寄せられそうになった看谷は、己己己己に裾をつままれた。

「……オレの作戦を読むなよ」

「アタリに目印でも付いてるんじゃないか、ですよね? 実は私にも作戦があるんです、コンソメ味のシャカシャカポテトを買ってきてもらえませんか?」

「は? ポテト?」

 小銭を渡された看谷はワケがわからなかったが、屋台の裏手側へ離れた己己己己と分かれておつかいへ。

 戻ってきて紙袋を渡すと、最弱保険委員はシャカシャカするだけで息を切らした。

「はぁ、はぁ……看谷さんもどうぞ。タイミングが来たら教えますからもうちょっと待ちましょう」

「うん……? うん」

 ポテトをつまみながら待つこと数分。

 店主の口八丁にかかった挑戦者たちがくじを引いていったが、誰も彼もが駄菓子とかおもちゃばかり当てていた。

 そうして客足がいったん途切れると、店主はカゴを手元へ引き込んだ。

 別のカゴに詰まっていたくじを流し込む調子で補充して。……最後に1枚、道具入れに分けてあったくじを混ぜ込んだ。

「あの。1回、お願いします」

「ちょ、己己己己?」

「おっと。ようお嬢ちゃんお坊ちゃん、いらっしゃあい」

 くじのカゴが定位置に戻された瞬間に、己己己己にグイグイ押された看谷は屋台の前へ連れ出されていた。

「ウチは当たるよ~! 通りすがりの皆さんもよおく見てみな~、おっちゃんが本気を出せばこうして……」

「あ、すみません、ちょっとコレ持っててもらえますか」

 くじを漁ろうとした店主は「へ?」、……突き出されたポテトの紙袋を反射的に受け取ってしまった。

「看谷さん看谷さん、お金お金」

「うん……っ? うん?」

 看谷が己己己己へ渡した300円が、くじのカゴの脇へ乗せられた。

「じゃあ引きます」

「ちょっっ! 慌てんなよお嬢ちゃんっ、今からおっちゃんが……」

「大丈夫です」

 そして。店主が動く前に、己己己己はカゴの中へ手を突っ込んでいた。

 その細指でくじたちを1周だけかき回したかと思うと、1枚をピンと摘出したのだ。

 ソレが彼女の胸元に引き寄せられた時には、捲られていた。

 2等、と。

「……あれ。2等でした」

「バ、バカな! そんな確率っ……ハッ、いやいやあおめでとうお嬢ちゃん! ほらな当たるだろう!?」

「ありがとうございます」

 己己己己はポテトの紙袋を回収した代わりに、2等のくじを店主の手へ乗せたのだった。

「看谷さん。2等ですって、どれにします?」

「へ? あ、あー、えーと? え? どれって……」

 看谷は、ゲームソフトや特大ぬいぐるみが並んだ2等の棚を見上げて……。

  ◯ ◯ ◯ ◯

 縁日の灯りから少し離れた、神社の駐車場で。

「ホントは1等のピーステ5を当ててあげたかったんですけど。おじさんが入れたのは2等だったんですね」

「どういうことなんだよ……。ああもう、ポテト食べ終わったんだから持ってくれよコイツ」

「ダメですよ。看谷さんが出したお金で当たったんですから、その子は看谷さんのものです」

 看谷は、『ファイナルレジェンズ』のマスコット的モンスターである『青さめ』の巨大ぬいぐるみをだっこしていた。

「たぶんですけど、アタリはおじさんが決めた時しか入れてないんです。インチキって言われないように、それとあのパフォーマンスでお客さんを集められるように。だからタイミングが重要だったんですよ」

「でも、あんなにくじがあった中からどうやって?」

「看谷さんも言ってた『目印』ですよ。裏面の線はおとりですね、表面の印刷のズレと四隅の小さな突起みたいです」

「……おっさんがアタリくじを持ってた一瞬でそれを見抜いたのか」

「あ、他の屋台だとまた違う仕掛けだと思うのでマネしないでくださいね」

「できるか!」

「そうですね。6歳の時にやったきりでしたけど、これでまた屋台の人たちに覚えられちゃったのでもうできないです」

 看谷はシワの寄った眉間を押さえた。

(こいつ、オレのカラダのクセを見抜いてジャンケン10連勝したもんな……)

 恐るべき観察眼である。ここに来る途中、人混みに酔って白目をむいていたくせに。

「私だと思って、大事にしてあげてください」

「だっ……! 普通に部屋置いとくだけだって、フツーに! デカいだけじゃんこんなの!」

「ゲームソフトもあったのに、看谷さんがこの子を選んだんじゃないですか」

「それは……面白くなさそうなヤツばっかだったから!」

 己己己己が「そうなんですか」とぬいぐるみを撫でてきたのに対して、看谷は意味も無く提灯の灯りを見上げるのだった。

(……言えるかよ。おまえが当てたんだから、おまえにあげるならどれがいいのか選んだんだ……なんて)

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