15-1「夏祭り」
駅近の神社の夏祭りは、駅前広場まで屋台の連なるそこそこ賑やかなものだ。
石造りの大鳥居の脇には案内板が立っていて、神社のあらましが記されていた。
誰も読もうとはしないソレを、看谷 悠斗はケータイのカメラで記録していた。
縁日の賑わいも見渡して、全ての屋台を数えられるくらいに何枚も撮っていった。
「自由研究は順調そうですね、看谷さん」
振り向いたらそこにいた己己己己 癒子に「うあ!?」、おもわずシャッターを押してしまった。
浴衣にぽっくりを履き、ゆるふわロングヘアーをうなじのそばで結い上げた己己己己だ。
「己己己己……。ま、まあな、よく見たら神社ごとにけっこう違いあるんだよ。夏祭りって」
「へえ~。もう帰るところですか?」
「いや、さっき着いたばっかりだけど……。今からお社のほう行ったり屋台回ったり」
「よかった。やっぱり待っててくれたんですね、約束どおり」
「べ、べつに約束はしてないだろ! もしかしたら会うかもなって言ってただけ!」
「そうですね。じゃあせっかくなので、いっしょにお参りしませんか」
看谷は「……ぉん」と斜めに頷いて、己己己己と2人で賑わいの中へ進んでいった。
社殿までそう長いものではない参道だったが、両脇に並ぶ屋台と人混みのせいでなかなか進めなかった。
「お。ベビーカステラ買ってっていいか?」
「看谷さん、お参りが先ですよ。神様のためのお祭りなんですから、お参りの前に屋台に寄り道するのは失礼なのです」
「マジメか。まあいいけど」
他にも、参道の真ん中は神様が通る道だから云々かんぬんと言われながら。聞き流しながら、参拝の列へ。
鈴を鳴らして。お賽銭を投げ込んで、二拍手。2人揃って手を合わせて、祈って。
(テストの点が上がりますように。小遣いも上がりますように。あと最新ゲーム機ください)
そうして社殿の脇、祭られた神様の縁起が記された大絵馬の前へ。
「己己己己はどんな願い事したんだ? オレはまあゲーム機とかいろいろだけど」
「私、お願い事はしてないですよ」
「へ? なんで?」
「お参りは、土地を見守ってくれてる神様に感謝するものですから。そのついでに個人的なお願い事をするなんて……」
「やめろよ! オレが卑しいみたいだろ!」
「強いて言うなら、これからも無病息災でありますようにってお願いしました」
「だからやめろよ! マジメかって!」
看谷はごまかす調子で大絵馬へケータイのカメラを向けた。
「まあそんなことよりっ、えーと、ここの神様のご利益は……。学業と縁結びか」
己己己己が「えっ」と背筋を伸ばした。
「……看谷さん。もう一回お参りしませんか」
「へ? なんで? おまえもうテストの点イイじゃん」
2回目のお参りでは、己己己己にナメられないように家内安全を願った看谷だった。




