14-2「部屋遊び」
「ふぅ~……だいぶ進んだよな、宿題。わかんないとこ教えてくれて助かってるよ己己己己」
「いえいえ、こちらこそ」
午後3時すぎ。ローテーブルを共有して夏休みの宿題を広げあっていた看谷と己己己己は、一区切りつけて体を伸ばした。
そう。そもそも己己己己が看谷家へやって来た目的としては、腰を据えて夏休みの宿題をやっつけることなのだ。
(隣の席のよしみっていうか? 学校でもこんなふうに教えあうことあるんだから……うん、まっとうまっとう。健全健全)
始めてしまえば何をドギマギする必要があっただろう、集中に集中を重ねてもう2時間経っていた。
「一休みしませんか? お土産に、夏バテ予防に効くオクラのピクルスを作ってきたんです」
「もうちょっと中学生らしいものつまもうぜ……。下でなんか探してくるよ」
「じゃあピクルスは家族でどうぞ。絶対食べてくださいね」
「はいはいありがたく」。オクラと酢がみっちり詰まったビンを持って、看谷は1階のキッチンへ。
やがて茶菓子を調達して部屋に戻ると、己己己己は主にゲームグッズが収まったコレクションケースを見上げていた。
「看谷さん看谷さん。いつも話してる『ファイナルレジェンズ』って、私でも遊べるゲームでしょうか」
「おっ……! 興味あるのか? あーいや、でもどうかな……普段ゲームやらないやつにはとっつきにくいかも」
「よかったら見せてくれませんか?」
看谷は「いいぞー」、おもわず声を弾ませながらゲームを起動させた。
看谷のアバターキャラである青年騎士がモンスターまみれのダンジョンを進撃していく……。
「やってみるか? ほい、いまはソロだから誰にも迷惑かけないし好きなだけ死んでいいぞ」
「え、え、あうあう、いきなり渡されても……あっ。もうやられちゃいました……」
「はは、わるいわるい。ちょっとイジワルだったな。ちなみにこれでもチュートリアルエリアだ」
己己己己は何度かリトライしたが、コントローラーのボタンを目で確認しながら押す典型的なゲーム初心者だった。
「な、ハードなゲームだろ。だから安藤も黒瀬も挫折しちゃってさ」
「むむむ……私、がんばります。お父さんが同じゲーム機持ってたと思うので、お願いすればたぶんなんとか」
「い、いやいや。そんなムキになるなって。ゲームは楽しむものでがんばるものじゃないぞ……そういう人間もいるけど」
看谷は己己己己の手からコントローラーを回収する代わりに、みたらし饅頭の最後の1個を掴ませてやった。
「そうだ。このゲーム、すごく自由にキャラが作れるんだよ。おまえにやらせたらおもしろキャラができるかも」
タイトル画面に戻ってキャラクター作成画面を開くと、己己己己は「ほほう」と興味深そうで……。
◯ ◯ ◯ ◯
「できました」
武芸の締めのようにコントローラーを置いた己己己己に対して、看谷は唖然としていた。
……己己己己そのものの魔法使いが、画面の向こうでニッコリしていたからだ。
「って己己己己じゃん! なんでキャラ作りだけこんなにうまいんだよ!?」
「こんなふうにメイクやオシャレそのもので遊ぶゲームも多いんですよ。女の子のゲームって」
己己己己は、まさに自分の分身じみたキャラデータをちょちょいとセーブしたのだった。
「さてと。もしかしたらいつか、この子が旅に出るかもなので……看谷さん? 大切にもらってあげてくださいね」
「デ……データだけは残しておいてやるよ……それだけな!」




