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最弱保健委員の己己己己さん  作者: 古丹那 リタ
第13話(8月第1週)
42/55

13-3「場所当て」

 夕方、下り線の急行電車で。

 看谷、安藤、黒瀬の男子3人は車内で横並びに座っていた。

「いやあ……さすが都会だったよなあ。ゲーセンはデカい、本屋もデカい、飯屋が多いしトルコアイス屋のオヤジは強い」

「あれはもう大道芸っていうか武道の域だなー。脱出ゲームのカギだってもうちょっと簡単に取れたよー」

「……………………(カスタムパソコンのカタログを読んでいる)」

 山越え谷越え片道1時間ほど、都会の電気街へ遊びに出かけた帰りだった。

『後より参ります快速列車との連絡待ちです。発車までしばらくお待ちください。繰り返し申し上げます……』

 と、ある駅に停まった時。安藤がケータイのカメラを構えながら背後の車窓へ振り向いた。

「あっ、ちょっとまってねー……はいオッケー」

 彼が撮ったのは、駅の真ん前にあるショッピングモールだった。

「……………………(モールを指差しながら首を傾げている)」

「黒瀬の言うとおりだな。モールぐらいオレたちの地元にもあるだろ」

「次に行ってみたいところのメモ代わりってねー。そうだオマエら、この写真で一勝負しないー?」

 「勝負?」と繰り返した看谷と黒瀬のケータイに通知。安藤がモールの写真をメールで送ってきたのだ。

「友達に送って、場所当てしてもらうのさー。正解不正解は正直二の次で、既読付く速度や返信内容で人望を測るわけー」

「またSNSで妙な診断系ハッシュタグ見つけたんだな」

「ア・タ・リー。予想しにくくするために、異性の友達に送るとベストらしいー。じゃあボクは戸高にー」

「え、ちょっ、女子に送るの確定!? ……ったく、己己己己のしか知らないからそれでいいよな」

「……………………(金城のプロフィールを示している)」

 かくしてクラスメイトの戸高と己己己己と金城へ、写真の場所を当ててほしい旨のメッセージがそれぞれ送信された。

 すると、三人とも10秒と経たずに既読が付いた。

 しかも、三人ともほぼ同時に。

 意外に思うべきか、勝手なイメージながら女子はこれくらいが普通なものなのか。

 看谷たちが顔を見合わせていると、ややあってメッセージ画面に動きがあった。

 『電車の窓越しに撮った写真だね? どこだろう、わたしは地元からほとんど出ないからね』

 1着で応えたのは戸高だったが、場所当ての答えという意味では無回答も同じだった。

 『ああほら、あっこあっこ! 上上線の途中にあるモールやろ、見たことあんねん知っとんねん! ほんまに!』

 ややあって2着で応えたのは金城だったが、答えているというべきか答えていないというべきか。

 『ここ、どこでしょうか』

 と、3着でやっと応えた己己己己の質問返しに看谷は目が点になった。

 写真が添付されてきたからだ。

 己己己己が、顔も見えないほど高身長の誰かと腕を組んでいるセルフィーが。

「なっ、だっ……!?」

「ちょ、看谷ぃ? 見えない見えない、なんだなんだー?」

「……………………(とりあえず座れとシートを叩いている)」

 たしかに他の乗客にチラ見されてしまったので、看谷は軋むように座り直した。

 服屋だろうか。己己己己に腕を組まれたソイツは、トレンドのコーデで靴からネックレスまでバッチリ決めていた。

「だ、誰だコレ?」

「……………………(自分のジャケットをつまみながら親指を立てている)」

「おいマジかー、高身長イケコーデ男子ー? 顔は見えないけどずいぶんガッチガチだねー……なんていうかー、初デートみたいなー?」

「なんでオレを見るんだよオレを!」

 再び立ち上がった看谷は、友人2人に促されて再び座った。

「ぐっ……。そ、そうだよオレが気にする必要なんか無いし誰といようがあいつの勝手じゃん。こんな写真をなんでかいきなり送りつけてくる奇行もなっっ……!」

「ものすごい気にしてるじゃないのさー。とにかくほら答えてあげなってー」

「……………………(看谷の目をズビシッと指差している)」

 看谷は前のめりに「くそぅ」、送信フォームをタップした。

(……なんだこの気持ちは。息が詰まる。呼吸ってどうやるんだっけ)

 画面上に言の葉を紡ぐ。『誰だそいつ』……消した、『服屋?』……やり直した、『デートか?』……止まった。

「う、うおおおお……! はああ、うううん、くそおおおお……っっ」

「……………………(看谷へケータイを構えている)」

「こーらー黒瀬ー、およしなさいってー。いま、世界の存亡をかけた内なる戦いが繰り広げられてるんだからー」

 内なる看谷が言う、『無視しろ』と。けれども他の内なる看谷も言う、『聞き出せ』とか『怒れ』とか……『探せ』とか。

 『そこ、どこなんだよ!』

 送信フォームに最後に残ったのは、そんな質問返しだった。

(なに考えてるんだ、あいつはぁぁぁぁ……!)

 『送信』ボタンをタップするだけの親指がとんでもなく重かったが、なんとか送りつけることができた。

 と、己己己己からの返信はあっという間にやって来た。

 高身長イケコーデ男子……の、マネキンの全身写真が。

 看谷は「ほあ?」、アホみたいに口が開いた。

 さらに、写真が2枚続けて送られてきた。

 ショッピングモールの景色……そう、看谷たちが車窓の向こうに見ているモール内で撮られた写真と、

 モールの服屋の前で、己己己己と金城と戸高が『イェーイ』と肩を寄せあったスナップセルフィーが。

 『安藤くんもお出かけかな。黒瀬くんと看谷くんと』

 安藤のケータイに戸高からメッセージ。

 『場所当てハッシュタグのやっちゃろ? 人望あんなぁ~あんたら(笑)』

 黒瀬のケータイに金城からメッセージ。

 『てってれー。です』

 看谷のケータイに己己己己から煽り。

「……オレ、ちょっと行ってくる」

 みたび立ち上がった看谷は、電車から飛び出す前に友人2人に引き戻されたのだった。

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