12-1「ダブルチェック」
『おはようございます看谷さん。今、ちょっといいですか』
『わるい、学校に忘れ物したみたいでさ。今から取りに行くところなんだけどその後でもいいか?』
20分ほど前に交わした己己己己 癒子とのメッセージは、彼女の『了解です』の返信で締めくくられていた。
「おはようございます看谷さん。さあいきましょう」
「後でもいいかって言ったじゃん……了解ですって言ってたじゃん。待ち合わせしようって意味じゃないって」
夏休み初日。にもかかわらず制服姿で看谷 悠斗が学校へ行くと、同じく制服姿の己己己己が正門前で待っていた。
「夏休み初日なのにたいへんですね」
「ホントにな。で、おまえメッセでなに言おうとしてたの?」
「看谷さんの用事が終わってからでいいですよ」
看谷と己己己己は、部活動に励む生徒だけが登校している校内へ。
先生方は相変わらず職員室で仕事をしていて。『忘れ物』の事情を伝えて鍵を借りると教室へ向かった。
「あれ。おっかしいな……無いぞ。机はカラだしロッカーにも無い」
「何を忘れたんですか?」
探すというほどでもなくすっからかんのマイスペースを見回した看谷と、隣の自分の席に腰かけた己己己己と。
「漢字のドリル。宿題の。終業式の前、ぜんぶ揃ってるか確かめたんだけどな」
「それは……ちょっと違いますよ。必ず2回はチェックするようにって先生が言ってたのに、1回しかしなかったですよね」
「いや十分だろ。一覧表とも照らし合わせたんだし」
「看谷さん、ダブルチェックで確認は大切です。1人でするより2人でするならなおよしなのです。1つのミスが命にかかわるので病院では基本のキです」
「ここ病院じゃなくて学校だから……。ミスってもオレみたいなバカが生まれるだけ」
「それもダメです、看谷さんの隣の保健委員として見過ごせません」
己己己己は、映画に出てくる医療カバンじみた丈夫そうなショルダーバッグを開けた。
「……なので、えっと。終業式から帰ってきて、看谷さんがトイレ行ってる間に私がチェックして……」
「うん? 己己己己? ……己己己己ー?」
「ミスで持って帰っちゃいました、看谷さんの漢字ドリル」
「バカァァァァ!」
ショルダーバッグから『看谷』と書かれた漢字ドリルが抜き出された。
「誠に申し訳ございません」
「遅いわ! なんでもっと早く言わないんだよ!」
「来る前のメッセで言おうとしてたんですけど、看谷さんが後でって言ったんじゃないですか」
「その用事だったのかよ!? いやいやいや忘れ物の話した段階でゴリ押せよっ、オレがなに忘れたかわかってたのに!」
「いえ、コレって厳密には看谷さんが『忘れた』ものじゃないので……違う忘れ物があるのかなって」
「わかるかよ! わかれ! 察せよバカ!」
「ほら、ダブルチェックで意思確認は大切です」
「絶対! そういう! 話じゃ! なあい!」




