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最弱保健委員の己己己己さん  作者: 古丹那 リタ
第11話(7月3週目)
35/55

11-2「お茶」

 午後の休み時間。自分の席でケータイをいじっていた看谷は、ふと、隣の席の己己己己に目がいった。

「トクトクトク……」

 と、口で効果音を発するくらいには上機嫌そうに。彼女は水筒のコップへオレンジ色の飲み物を注いでいた。

 そうして両手で大事そうに持ち上げて、口付けて。コク、コク、コク……「ぷは~」。

「おまえのお茶、毎日違う色してるよな」

「あ。看谷さん、よく気がつきましたね」

「オレンジに、赤色に、黄色に、青色に、紫色に。ホントはジュースだったりして」

「ハーブティーですよ。私、ハーブティー作りが趣味なんです」

 予想外の答えに看谷は「へえ」、スマホを置いた。

「っていうと、ティーバッグとかから淹れてるわけ?」

「実はもっと踏み込んでます。ハーブを自分でブレンドしたり、フレーバーになる果物と合わせたり」

「おおお……なんかスゴいな。なんか……カ、カッコイイ」

「カワイイ?」

「カ・ッ・コ・イ・イ! 断じて!」

 看谷の脳裏に、ハーブティーの潮流とともにティーポット&カップを舞わせる己己己己のイメージがよぎった。

「ありがとうございます。相手に合わせてハーブの薬効を変えて、発酵の強さを調整して、飲み合わせを考えるのってとっても楽しいですよ。薬剤師の勉強になるかと思ってはじめたんです」

「って薬剤師? なーんだ、けっきょくいつもの保健委員ムーブか」

 ハーブティーマスター己己己己のスタイリッシュなイメージが、とたんに白衣の小悪魔風に変貌した。

「むむ。最初はそうだったかもしれないですけど、今は趣味と実益を兼ねて真剣に取り組んでますから」

「はは、ジツエキってなんだよ」

「飲んでみたらわかります。どうぞ、ローズマリーティーのアプリコットフレーバーです」

「アプ……なに?」

「アプリコット。あんずです」

「バラとあんず?」

「看谷さん、ローズマリーはバラじゃなくてシソの仲間です」

 と、混乱しているうちにローズマリーティー:アプリコットフレーバーを差し出されて。看谷は一口啜った。

「……おお。甘……酸っぱい……甘酸っぱい、うまい」

「あ、間接キスですね」

「うぶあっっ」

 ムセた。噴いた。

「げほっ、ごほっ! せ、せっかくうまいんだからストレートに味わわせてくれよバカ!」

「安心してください。私もこの後、看谷さんと唾液交換しますから」

「!??!?!? ッ、ゴクゴク……ぶはっごちそうさんっ、当然のマナーとして洗って返すからちょっと待ってろ!」

 毒を食らわば皿まで。唾液交換したコップを爆弾よろしく両手に乗せ、看谷は手洗い場へダッシュするのだった。

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