11-1「ショッピングモール」
「奇遇ですね。看谷さん」
「……おまえさ、オレの後つけたりしてないよな?」
町でいちばん大きな商業施設だろう、郊外のショッピングモールにて。看谷 悠斗は己己己己 癒子と遭遇した。
「考えすぎですよ、今回は偶然です。この後、カリンさんと2人で待ち合わせなんです」
「ああ、隣のクラスの……花井だっけ。女子の。仲良かったんだな」
『偶然』のあたりがなぜだか気になったが、己己己己はウソみたいなことばかり言っててもウソは言わない女子だ。ゲーセンで先日出くわした時よりも無難な感じに、チュニックとジーンズの装いが動きやすそうだった。
「看谷さんは?」
「オレは……ごほん。本屋に」
「へぇ~。それじゃあまた、バイバイです」
「ああ、うん……? また」
そうして己己己己は歩き去っていった。……普通に歩いていっただけなのに、だからこそ看谷は意外に思った。
(すんなりいなくなったな。『いっしょに遊びましょう』とか『ついていきます』ぐらい言われると思ってたけど)
◯ ◯ ◯ ◯
(さすがモールの大型書店。限定アイテムコード付き『ファイナルレジェンズ』設定資料集、ゲット!)
看谷は大きなムック本入りのビニール袋を握り込んだ。
(……オマケのはずのアイテムコードが本命で、本の中身はあんま興味無いなんて言いにくいからなあ。…………ん?)
その時、ケータイに通知。着信ではなくメッセージだ。
「って、己己己己っ?」
開かれたメッセージ画面にて、セルフィーな『己己己己』のアイコンが看谷をたじろがせた。
自室らしい場所で、セーラー服姿を斜め上から不器用に撮っただけのものなのに。
『本屋さんで無事に買えましたか?』
看谷は「は?」、周囲の雑踏を見回した。……見るかぎり己己己己はいなかった。
『買えたけど。無事にってなんだよ』
『えっちなの買ったんですよね?』
『オレをなんっだttおもつてンダ!?』
動揺のあまりまともにタイピングできなかった。
(ちがう、ちがぁぁう! オマケのアイテムコード欲しさにバカ高い設定資料集買っただけなんだっ、ってこんなこと言ってもあいつわかるか!? もっと当たり障り無い感じに……いやそれこそエロ本買った言い訳みたいにならないか!?)
なんて、打ってはやり直して送信できずにいるうちに……彼女からピロンとメッセージが続いた。
『看谷さんも男の子なのでしかたないですね。はい、どうぞ』
と、画像が添付されてきたのだ。
試着室らしい場所で自撮りされた、ツーピースの水着姿の己己己己が。
『似合ってますか? この水着を買いますね』
……しかし。看谷は砕けた腰をベンチへ下ろすのがせいいっぱいで、いよいよ返信できなかったのだった。




