10-2「ゲーセン◯◯◯」
「奇遇ですね。家族で買い物してたんですけど、思ったより早く終わったから遊びに来たんですよ。お父さんとお母さんは上の階でメダルスロットしてますから、帰る時間までこっちには来ないと思います」
「そ、そんな心配してないから!」
「……? なにを心配するんですか? 看谷さん、私のお父さんとお母さんに会ったらなにか恥ずかしいんです?」
(く、くそう……! ワザとか!? それとも天然か!? いやべつに2人でいるとこ見られたってべつに……!)
ワザとの時もあるし天然の時もある、無表情ニッコリ。ゲーセンで己己己己と出くわしてしまった看谷はピンチだった。
「せっかくですからいっしょに遊びましょうよ」
「う……いい、いい! 今日オレ、1人でじっくりやりこむつもりだったし!」
「安藤さんたちに断られてガッカリしてたじゃないですか、学校で。誰かと遊ぶつもりだったんですからいいですよね?」
「い、いやそれとこれとはちが……」
「そうですね、私はゲーム詳しくないのでみなさんの遊び方とは違うかもですけど。クレーンゲームとかどうでしょう?」
クレーンゲームコーナーへ歩きだした己己己己に対して、「バッ……!」と震えた看谷は彼女の行く手に立ちはだかった。
「いっしょにクレーンゲームやるのはカッ……カネがワリに合わないからコレにしよう! な!?」
不条理なアーム調整と景品配置に白熱する男女たちのキラめきを背中に、看谷はメダルマークのカードを取り出した。
◯ ◯ ◯ ◯
「いやあ助かったよ己己己己、メダルの預かり期限が迫っててさ。おまえがバカみたいに使ってくれて助かる助かる」
「増えそうで増えないですね」
1時間後。看谷と己己己己は二人がけの椅子に並び、ドーム型メダル落としゲームを続けていた。
「こうやって2人でメダルゲームしてると、クレーンゲームよりもカップルっぽいですね」
「うあ!? そんなわけないだろクレームゲームよりマシッッ……あ、くそ……」
しまった。数えきれないメダルを無心で投入しているうちに隙ができていた。己己己己に「ふふ」とニッコリされた。
「ていうかべつに、2人でクレーンゲームやってたからってカップルっぽいとも限らないですし」
「く……クレーンゲームなんて普段やらないからよくわかんないんだよ。でもほら……多かったじゃん、カップルっぽいの」
「そうなのですか? 私もクレーンゲームはやらないですけど、そんなところまで見てなかったのでわかりませんでした」
看谷は辛うじて「ぐう」の音しか出せなかった。たしかに、勝手に意識しすぎていただけである。
そのくせ。たしかに。こういうメダルゲームに2人がけしているカップルの多さは見ていないのだから救いがない。
「あ。ごめんなさい看谷さん、そろそろ呼ばれちゃったみたいです」
「っっ!? どこ、どこだどこから!?」
「そんなに逃げなくても。お父さんたちが来たんじゃなくて、コレ、ですよ」
椅子から跳び退いた看谷に対して、己己己己はポケットから『コレ』を取り出した。
『お父さん』からのメッセージが通知された、スマートフォンを。……真新しいケータイを。
「えッッ!? おまえ、ケータイ買ったの!?」
「はい、ここに来る前に。看谷さんも早く買ってもらえるといいですね」
己己己己が「それじゃあ」と、バイバイの後ろ手とともに去っていったのに対して。看谷は「ぐぎぎ」、ジャックポットを引き当てたメダル落としとともに置いていかれるのだった。




