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最弱保健委員の己己己己さん  作者: 古丹那 リタ
第10話(7月2週目)
31/55

10-1「ゲーセン」

(安藤も黒瀬も来れないなんてなあ。1PLAY300円の『戦地の絆』、やり込もうと思って軍資金貯めてたのに)

 看谷 悠斗たちの地元は片田舎なもので、自転車でも絶妙に遠い町中まで行かないとゲームセンターはなかった。

 片道30分かけて1人で遊びにきた看谷は、店内でもひときわ大音響に満ちたコーナーへ足を踏み入れた。

 『音ゲー』コーナー。

 ファミリー向けに門戸の広い太鼓型音ゲーでさえ、ガチゲーマーによる熾烈な高難易度攻略が繰り広げられていた。

(うわスゲー……1人で2人プレイ用の譜面やってるヤツとか、指出し手袋してるヤツとか、アレって自前のスティック?)

 看谷がコインを入れたのは、音楽に合わせて9つの大きなボタンを押す音ゲー。太鼓型と同じくらいポップなシリーズだ。

(オレはあそこまでガチじゃないからなあ。スーパーのゲームコーナーとかでなんとなくやり込んでただけ……だし!)

 看谷は任意オプションであるBPM調整やHIDDEN有効化を行ったうえで、最強難易度の1つ下を選択した。

(~~~~~~~~!!)

 目を見開き、唇を引き結び、脚を肩幅までしっかり開いて、ボタンたちへ両手を滑らせていった。

  ◯ ◯ ◯ ◯

「っふぅ~~~~……やっぱ隠し曲は難易度詐欺だぜ。良い汗かいた」

 腕しか振り回していないはずなのに、1曲やりきった看谷は汗だくだった。プレイ後はいつもこうである。

「ハンカチよりウェットティッシュが良さそうですね。失礼します」

「おぉ~……ヒンヤリして気持ちいい。サンキューな己己己己…………己己己己ぃ!?」

 汗を拭いてくれた彼女、同じクラスの己己己己 癒子が「こんにちは」と傍らに立っていた。

「安藤さんと黒瀬が来られなくてなんだかなあ、の辺りから見てました」

「いつから見て……イヤ先読みするなよ心を読むなよ! いたなら声かけろよイヤ声かけるなよ!」

 「どっちなんですか」とウェットティッシュをゴミ箱へ捨てた己己己己は、当然ながら私服である。

 看谷がシャツに半ズボンな味気ない装いであるのに対して。こんな薄暗いゲーセンにいるのがもったいなく思えるようなレースのブラウスにデニムスカートで、ちょっと大人びてカジュアルにまとめている。

「……次の曲、選ばなくていいんです?」

「うわヤバっあと15秒!? ええいしかたない、クリア済みのカテゴリーからテキトーに……」

「あ、この曲、私も好きなんです」

「コレ!? って、オレもべつに己己己己に合わせなくていいだろ……!」

「じゃあべつに、合わせてもいいですよね」

 ズイッ。臨戦態勢をとろうとした看谷だったが、己己己己が割り込んできたのでスペースを半分こせざるをえなかった。

「ちょ、え!? なにしてんの!?」

「看谷さんはそっちのボタン4つで、私はこっちのボタン4つですね」

「2人プレイ!? いや、今やってんのそのモードじゃないから!」

「あれ、でもボタンは9つあるから1つ余ります、どうしましょう」

「だから余るんだよ1人プレイモードなんだから! ええと、速度下げて設定デフォルトにして難易度ノーマルに……!」

「それで看谷さん、1つ余るボタンは?」「オレがやるから!」

 普通に遊んだらフルコンボ余裕なのに、看谷はミスを連発するのだった。

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