8-1「テスト勉強」
(期末テストでもパッとしなかったらケータイ買ってもらえなくなる……! 80点、いや70点とればいいよな!)
「何点でいいやと思った人は、その点数の20点下しかとれないそうですよ。看谷さん」
「オレってそんなわかりやすい顔してんのか!?」
放課後。図書室でテスト勉強していた看谷 悠斗の隣に、己己己己 癒子が座った。
……他の生徒たちや司書に見られて「す、すいません」、看谷は大声を自重した。
「テスト勉強するから今日はいっしょに帰れない、って言ったのは看谷さんじゃないですか」
「理由になってない気がするけどな……。で、なんで帰ってないんだよ」
己己己己は、借りてきたらしいジュブナイル小説の表紙を看谷へ見せた。
「私もテスト勉強です。現国の教科書に載ってた小説を最後まで読んでおきたくて」
「教科書に載ってた部分しかテスト出ないだろ?」
「心情描写の読解のためには、文脈の前後も学んでおいたほうがいいと思うんです……」
と。己己己己の無表情が、いつもより頼りなさげに口元をニッコリさせた気がして。看谷は閃いた。
「ははーん。なるほど、おまえってばヒトのココロの読み取りかたがズレてるもんな」
「そうかもですね? 看谷さんの邪魔にならないようにしてますので、おかまいなく」
「いや、それならべつにわざわざオレの隣じゃなくっても……まあいいけどさ」
からかってやろうと思ったのに、べつに悔しそうでもなくて。本当におとなしく、己己己己は読書を始めるのだった。
◯ ◯ ◯ ◯
「あー終わり終わり、今日はここまで。帰ろっと」
「そうですね。長時間の勉強よりも、集中できる短時間をこまめに作ったほうが身につきますよ」
「……けっきょく最後までいたなおまえ。今日もおまえと下校かあ」
「恥ずかしいですか?」
「聞き方ァ! べつに恥ずかしくないしっ、帰り道が同じなんだからべつにフツーだし!」
……司書にまた凝視されて「す、すいません」、看谷はいろんな意味でソワソワしながら己己己己と図書室を出た。
「ありゃ、己己己己ちゃんと看谷やん。まだおったん?」
と。数冊の分厚い文庫本を小脇に抱えた金城と廊下で鉢合わせ。
「はい。図書室デートじゃないですよ」
「そういうとこだぞおまえの読解力! い、いや違う違う金城、俺は化学のテスト勉強してたし己己己己も現国のために教科書に載ってた小説読んでたんだ。ほらこいつって心情描写ってかヒトのココロの読み取りかたがズレてるからさぁ……」
「へ~そうなんやぁ。己己己己ちゃん、読解問題だけは教科書より完璧やってセンセにベタ褒めされとったけどなぁ」
「へ?」。……早口のせいで息切れした看谷のアホ面をよそに、金城は「ほなな~!」と通りすぎていった。
「……そうだ看谷さん。期末テストでも、点数見せっこしましょうね」「やだよ!」
本当に。己己己己のココロを読み取るのがムズかしすぎる看谷だった。




