7-2「情報教室」
「自由時間っていってもみんなの画面はモニターしてるからなー。エロやグロやナンセンスなもん見るなよー」
中1向けのプログラミング授業が投影されたスクリーンの脇で、仕事はやりきったとばかりに先生が目元を揉んだ。
授業終了のチャイムが鳴るまであと10分くらい。キャスター付きの椅子に乗って友だちの席へ移動したりして、薄暗い情報教室内はにわかに活気づいていた。
「ねえ看谷ぃ、ボクのとっておき動画マイリスト見るかいー? ログインしたらスグだよースグー」
「カワイイ動物動画でオレの顔がニヤけるの見たいだけだろ……。黒瀬にやれよ」
「黒瀬はもうネット小説読んでウルウルきてるもんねー。なー黒瀬ーパンダの落下100連発見ようぜー」
「……………………(目元を押さえながら安藤を制している)」
安藤と黒瀬はこういうスキマ時間でも遊びの引出しが多いタイプだが、さて、看谷はどうしようか。
「あ、そうだ。そういえば『超次元流ケンドウ』のWeb限定読み切りマンガがあるって……」「うーんー……」
と、キーボードへ十指を添えた時。通路を挟んで反対側の席から、彼女のうめき声を捉えてしまった。
……ほうっておいてもとりあえずは人畜無害なのに、チラッとでも振り向いてしまうのが看谷の弱みだ。
「どした? 己己己己」
「看谷さん。大丈夫です、私が打つの遅いだけですから」
「……とりあえず、左手の人差し指も使ってやろうな」
右手の人差し指だけでタイプしていた己己己己は、キー配列もまだ覚えきれていない様子だった。
「『マナモセトソチスイ』について検索しようと思って」
「なにって?」
「『マナモセトソチスイ』。上級生の人たちが話してるのを聞いたんです。『かかっちゃって首痛めた』とか『一晩うなされた』とか、珍しいウイルスかもしれません」
入力にずいぶんかかってしまったが、検索結果が表示された。
「お、動画がある。『忙しい人のためのマナモセトソチスイ』だってさ」
「WhoTube様々です」
『こんにちは! さっそく『マナモセトソチスイ』について解説いたしましょー!』
全画面で再生された動画の中。安っぽい教材DVDのような背景で、CGキャラの美女が腕を振り上げた。
そして、ノイズとともに消えた。
「「ん?」」
2人して画面を注視した、
『キェェェェェェェェェェェェェェェェ!!』
「うあぁぁぁぁ!?」「あうっっっっ!?」
瞬間、画面いっぱいに張りついてきた化け物美女に椅子ごとひっくり返った。
『てなわけで、『マナモセトソチスイ』っていうのはドッキリホラー動画のことでした! 友だちを引っかけてみてね!』
「……首を痛めました。ハッ、これがいわゆるコンピューターウイルス……!」
「ちがう……!」
己己己己の下敷き状態から、すぐに抜け出す看谷だった。




