7-1「電器店」
(ったく、こんな時間に電池だけ買いに行かされるなんて……。他のリモコンから入れ換えろよ、とりあえず)
初夏に入ってだいぶ陽が長くなってきたが、夕食後の時刻ともなるとさすがに暗い。
「ぉい、まいどありぃ」「うぃ、どうも」
店主からシャレっ気一つない紙袋を受け取って、看谷 悠斗は踵を返した。
(ジョンシンはもう閉まってるから、ついでに中古ゲームの発掘ってわけにもいかなかったし。ちゃっちゃと帰るか)
その時だった。店の外で大きな破裂音が弾けたのは。
「うあビックリした!?」
「お? この香ばしい破裂音は……」
と、店主はなぜか店の奥へ行ってしまったが、看谷は店の外へ。
するとどうだろう。すぐ近くの道端で、胸を押さえた彼女がフリーズしていた。
「あ、あう……あう」
足元に白っぽいガラスの破片……いや、粉々になった蛍光灯の破片を散らした己己己己 癒子が。
「己己己己っ? あーあー蛍光灯割ったのかよ、ケガは?」
「看谷さん……。だいじょうぶ……です、ありがとうございます。ビックリしちゃっただけです」
ホッと息を吐きあった2人の間に、ホウキとチリトリが差し出された。
店主だ。このセットを取りに店の奥へ行っていたらしい。
「大丈夫かぃー、気にすんな気にすんな。パリンっていうよりパァァンッッて割れるんだよなー蛍光灯って」
「ああ、ども。ありがとうございます、使います」
「お、やってくれんの? ていうか知り合い? エラいねーカノジョのために」
「カッッ、彼女とかじゃないから!」
「お嬢ちゃん、蛍光灯の形とか大きさはわかるかい?」
「あ、はい、メモしてきたので。割っちゃってごめんなさい……」
看谷は「聞けって!」と喚いたが聞いてもらえなかったし、ホウキとチリトリを振るった格好ではカッコつかなかった。
やがて、2人は後片付けと買い物を終えて。
「お騒がせしました。私、暗いところを見るのが人より苦手で、そこの電柱にぶつけちゃったんです」
「……ふーん。夜目がきかないってやつか、おまえらしいな」
自転車のスタンドを蹴り上げた看谷に対して、徒歩で来たらしい己己己己は手を振った。
「それじゃあ。また明日です、看谷さん」「待てよ」
と。看谷が呼び止めれば、フラフラと歩きだした彼女は振り向いた。
「……暗いとこ見えないって言ってるのに、灯りも持たないで歩きまわるなよ。自転車のライトでなんとかなるか?」
……看谷は己己己己の隣へ歩みを進めて、彼女の行く先を自転車のヘッドライトで照らした。
「…………」「な、なんだよ?」
なんだかまた固まってしまった様子の彼女の顔までは、ヘッドライトでは照らしきれなくて。よく見えなくて。
「なんとかならないです。2人乗りしませんか」「するかよ!」
スキあらばにじり寄ってくる天然危険物を警戒しているうちに、家の近所まで送り返すことができたのだった。




