表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最弱保健委員の己己己己さん  作者: 古丹那 リタ
第6話(6月2週目)
17/55

6-2「体験学習」

(あー……疲れた。校外でまであいつを保健室に、いや救護室に連れてくハメになるなんて)

 看谷は、体験教室や資格講習に用いられる会館にいた。

 自動販売機と丸椅子しかない休憩スペース。裏口のそばで隠しエリアじみていて、他に誰もいないのが落ち着けた。

(安藤も黒瀬も金城も戸高もいつの間にか消えやがって。まあチェックポイント回りは終わってたからいいけどさ)

 廊下の向こうに同級生たちの話し声が増えつつあって、壁掛け時計を見上げる。

(『あとは一人で大丈夫』って先に行かされたけど、ずいぶん遅いな……)

「あ。看谷さん」

「己己己己? なにやってんだよ、バター作り体験はじまっちゃうぞ」

 開かれた裏口からの声に、振り向く。

「てゃでゃいみゃ戻りますた……」

「バターになってるッッ!?」

 ドロドロに、這う這うの体にトロけた己己己己がそこにいた。

「どうした!」

「アタマはだいじょぶでふ」

「聞いてないしそうは見えない!」

「スタッフの人たちが、お詫びにってバックルームを覗かせてくれたんです。獣医さんにも興味があるので。興奮しすぎてアタマ痛くなっちゃいました」

「じゃあ大丈夫じゃないじゃんアタマ」

 おデコには湿布を貼られているが、まあ前髪に隠れているので目立ちはしないだろう。

「それでですね、それでですね。看谷さんにも聞いてもらいたいことが……」

「まてまて、後にしてとにかく体験教室行こうぜ。チェックポイント回りきってもコレやってないと赤点扱いだぞ」

 己己己己は「そうですか?」、呑気なものだった。

  ◯ ◯ ◯ ◯

「みなさんにも搾ってもらった採れたての生乳ですからねー、感激もひとしおですねー。できたてのうちに、お配りしたクッキーと一緒に食べてみるのをオススメしまーす」

 土産屋で買えるプレーンクッキーの試供品を紹介してみせる、アコギなスタッフの説明は看谷の耳に入らなかった。 

「生乳を生クリームにして、密封、冷やしながらよく振って、開封、かき混ぜて出る水分を移す、これを繰り返します……」

 己己己己が、完璧な手際でバターを作ってみせたからだ。

「バターができたら、できたてのうちにクッキーに塗って、看谷さんへ。おしまいです」

「もが。……ッ、素直にウマいだと……!?」

「素直じゃないですね。私をなんだと思ってるんですか。花嫁修業に含まれるものならだいたい得意ですよ、むふん」

(バンソウコウ1枚まともに貼れないヤツなのに……!)

「ところで看谷さん、さっきのお話の続きなんですけど聞いてください。私、バックルームで牛さんの直腸検査を体験させてもらったんです。命のぬくもりがまだこの手に残ってるみたいで感激です」

 看谷は「え?」。己己己己の手作りバター&クッキーを呑み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ