5-2「歯科健診」
今日は歯科健診。
「右下8番、バツ。7番バツ、6番バツ、5番ジーオー、4番歯垢、3番バツ、2番バツ、1番バツ」
(なに言ってるのかわからないけどバツが多いのだけはわかる)
自分の番が終わった看谷は、クラスメイトたちの列の脇をすり抜けて保健室のドアを開けた。
「わくわく」「うあ!?」
すると。ドアの脇ですりガラスをちょっと開け、中の様子を覗いていた己己己己を見つけた。
「ちょ!? 女子はまだ呼ばれてないだろっ、なにやってるんだよ己己己己っ……」
「こら看谷くん! 静かに教室に戻りなさい!」
「ち、違うって先生っ、こいつが……っていない!?」
◯ ◯ ◯ ◯
「……なにやってるんだ? 己己己己」
「こっくりさんの紙を書いてます。金城さんが今度やろうって」
「なにやってるんだよ。って違うソレじゃなくて!」
教室に戻ると、隣の席で己己己己は不穏な五十音シートを作っていた。
「歯医者さんって、職人かたぎって感じしませんか? 見学したくて待ちきれなくなっちゃいました」
「わかってんじゃないかよオレが言ってること! ったく、おまえの奇行のせいでムダに怒られたっての」
看谷はどっかりと着席。『自習』と書かれた黒板を眺めて頬杖なんか付けば、己己己己は「ごめんなさい」と頭を下げた。
「お詫びに教えてあげますね。歯医者さんが言ってた『バツ』は異常が無いってことですよ」
「え、ホントに?」
「はい。ちなみに『ジーオー』は歯肉炎の兆候、『歯垢』は歯みがき不足です。でも聞いてた限り看谷さんの歯はおおむね健康そうなので、『バツ』が多かったからってそこまで心配しなくて大丈夫です」
「……ぐ。オレ、『バツ』が多かったから心配してるなんて一言も言ってないぞ」
「言ってないですね。覗いてたから知ってます」
看谷は「このぉ……!」と赤くなった顔を己己己己へ向けた。
「おーい女子ー、そろそろ来いってさー」
男子の出席番号最後尾の陸田が帰ってきて、そう告げられれば己己己己は立ち上がった。
「じゃあいってきます。はいこれ、こっくりさんで遊んでてもいいですよ看谷さん」
「やらないわ!」と看谷は見上げたが、こっくりさんシートを机の上に置かれてしまった。
「いいですよね、歯医者さん。さの3番、かの2番、だの4番、さの3番……なんちゃって」
「……うん? なんか違くないか、それ」
しかし看谷に答えず、己己己己は金城や戸高と合流して教室を出ていってしまった。
……そしてなにげなく、こっくりさんシートを眺めた看谷は目を見開いた。
こっくりさんシート。……五十音図。…………さの3番、かの2番、だの4番、さの3番。
(『す』、『き』、『で』、『す』? ……~~~~っ、偶然だ偶然! テキトー言ってただけ!)
指でなぞってしまったのは、こっくりさん遊びに含まれるのだろうか。




