4-1「いる時」
看谷 悠斗だって、いつも己己己己 癒子と一緒にいるわけではない。
「……………………(黒糖コッペパンを頬張っている)」
「黒瀬ってホント無口だなー。まー、ボクはオマエらみたいに不器用な野郎どもも好きだけどねー」
「『ら』って、なんで複数形なんだよ安藤」
昼休み。看谷はなんとなくつるんでいるクラスメイトの男子2人と、なんとなく机を寄せあって弁当やパンを食べていた。
無口な黒瀬は言葉に依らないだけで表情豊かなほうだし、お気楽な安藤はたまに暑苦しいが屈託無い。
つるみやすい友達といっていい。
ハッキリとした理由があるわけでもないが、それこそ『なんとなく』、いわゆる『波長が合う』というやつだろうか。
一方、少し離れたグループでは……、
「なんや己己己己ちゃん、『青たん』知らへんのかぁ? スネとかめっさぶつけたあまりの痛みに、皮の下から青い牛タンが生えてくることやん」
「あう……! ど、どうしましょうはじめて知りました、戸高さんも知ってましたか……!?」
「普通に関西弁で『青あざ』のことだよ。まったくもーやめなよ金城さん」
己己己己、金城、戸高の女子3人が弁当箱の中身をシェアしあっていた。
関西弁な金城は勢い任せのからかいたがりで、メガネな戸高はずいぶん小柄だが物腰は大人びている。
「己己己己さんが信じちゃったらどうするのさ。彼女のがんばりは看谷くんへぶつかっていくんだからね」
(聞こえてるぞ……!)
「そやって~看谷ぃ、聞こえとるかぁ?」
「聞こえてないフリしてたのわかってただろっ、金城!」
男子は男子同士で、女子は女子同士で。共通の友人という繋がりで交流することもあるが、あくまでもゆるやかなものだ。
「看谷さん、帰りに図書室寄っていいですか。関西弁について勉強したくなりました」
「わ、わざわざオレに聞かなくても行けばいいだろ。オレはフツーに先に帰るし……」
「オマエねー看谷ぃ、わざわざそんなイジワル言わなくてもいいだろよー。己己己己ちゃんはなー、名字に『己』が4つも入ってるのにヒトのことばっかり考えてる優しい子なんだぞー?」
「……………………(安藤を凝視している)」
「あはははは! それ言いたいだけやんけって黒瀬まで言うとるやんけ!」
「ああ安藤くん、この前言ってたポークロッソのペンケースなんだけどほんとにモールにあったよ。情報ありがと」
休み時間や体育のグループ活動では、看谷だって己己己己だって同性の友人とつるんでいることが多いのだ。当たり前に。フツーに。言うまでもなく。
ただ、ただ、たまたま。己己己己と2人でいる時が、いろんな意味で記憶に残りすぎているだけなのだ。
◯ ◯ ◯ ◯
「あ。偶然ですね看谷さん、フツーに先に帰ったんじゃなかったんですか?」
「……おまえさ。オレが読書感想文出し忘れたから図書室来るって、分かってただろ」
「さあ? どうだったでしょう」
『なんとなく』とも『波長が合う』とも少し違うようなのに。いつの間にか2人になってしまうのは、なぜなのだろう。




