初めての戦いです
その後私たちは何事もなく進み、六日目となった。
「ここからは少し治安が悪い道を通る事になるからアリアさんとミナさんはもう少し奥の方に移動しよう」
ヒナさんに言われて奥の荷物の隙間に移動する。
「アリア様、もし何かあったら私を盾にして絶対に逃げてくださいね」
ミナだって子供の頃から王城に住み勤めていたから物騒なこととは無縁のはずなのに健気に私を守ろうとしてくれる。
「ミナ…私の旅は一人では成り立たないの。お城から追放されたあの時からこの旅は『私たち』の旅になったよ、二人で絶対ゲーテヴォルグに辿り着くの」
「アリア様…」
ぐすぐすと鼻を鳴らすミナ。
「ミナさん、泣くのはまだ早いよー!あと、外が騒がしくなってきたからじっとしていてね」
荷物の影から外の様子を伺うヒナさんが口元に人差し指をもっていく。耳を澄ませると外からダイさんとジーンさんの声とキン!と剣と剣の重なった音であろう騒音が聞こえる。
商談でも雇っている専属の護衛がいるからきっと大丈夫。ヒナさんは私たちの近くで護衛する為にすぐに戦える姿勢をとっている。
この突然の緊迫した空気に、これは本物の命のやり取りなんだ。そう実感しているはずなのにどこか遠くにいるような気持ちになる。
お城でも騎士たちの訓練などは見ていたけどそれとは全く違う。
(このような命をかけた戦いの上に私の命が成り立っていたんだ…)
頻繁に戦争がある訳ではないけれど、戦地に騎士たちが赴くことはある。ふいに思い浮かんだのはいつも私を心配してくれていたユリウス騎士団長。ユリウス騎士団長は常に最前線に立ちマグダリアを守ってくれている。それでもいつ命が途絶えてしまうかわからない場所で家族と離れて騎士たちは守ってくれていた。
どこか他人事のように思っていた戦死した騎士たちの追悼墓地…一度も赴くことはなかった自分が恥ずかしい。
「ヒナさん!!」
ミナの叫びで我に返った。ヒナが飛び出していき私たちがいる荷馬車に乗り込んでこようとした賊と対峙している所へ後ろからもう一人の賊が斬りかかった。
(もう私は守られるだけのお姫様じゃない)
収納ポーチから咄嗟にあるモノを袋ごと取り出して投げつけた。
「あぶ!ぶふぇぇ!目が…目がいてぇぇぇ!」
「なんだこれ!助けてくれ!いてえー」
賊二人が地面に転がりのたうち回っている。よし、なんとか命中したわね!
「アリアさんありがとう!…これもしかして唐辛子?」
少しだけミナさんの体についてしまったものを彼女はクンクンと匂いを嗅いでいた。
「そうです。調理の時に使おうと思って大量に買っておいたものがやくにたちましたわね、私はもう見ているだけのお姫様ではなく誰かを助ける力を手に入れているのです」
「ふふふ、いいねアリアさん!私たち今から友達にならない?」
友達。笑いながら手を差し出してくるヒナさんの手を笑顔で握り返した。




