私、平民になりました
「アリア・ユーステス・マグダリアはこの時を持って王女の座を剥奪し、王都から追放とする」
真っ赤な口紅で彩られた唇をニヤリと広げ、目の前の王妃は私に告げた。
父親である国王陛下は昨夜毒を盛られ一命は取り留めたものの意識は未だ戻らない状態で、その犯人が私だと目の前の王妃は告げる。
私は王女と言っても王妃の子ではなく、側室の娘だ。
父が隣の国へ招かれた際に一目惚れをし強引に連れてきた隣国の子爵の娘との間に生まれた子どもだ。
そんな母も私がまだ子供の頃に亡くなってしまってもうこの世にはいない。
自分で言うのもなんだけど顔だけは母に似てかなり整った顔をしていると思う。
この城で唯一の味方だった王太子と第二王子のお兄様たちは王妃様の子どもだが今は王太子のお兄様は視察に出ていて、第二王子のお兄様は留学でお二人ともがいない状況の中の今である。
私をこの城から、王女という立場から追放したいが為に全て仕組まれたことなのは誰の目に見ても明らかだった。
それでも私の味方は今この場には誰もいない。王女である私は結婚をしたら王族であっても今ほど影響力もなくなる為、貴族達だって味方ではない。
「その者を連れて行け」
王妃のその一言で私は広間から外へと出される。
泣かないし叫ばないし許を乞う事だってしない。だって私は何も悪いことはしていないもの。
精一杯のカテーシーをしてみせる。一瞬王妃が悔しそうな顔をした。
それを一瞥してその場を後にした。
わかっているわ。国王陛下であるお父様が唯一今でも愛してやまないのはもう今はいない私のお母様。私の事だって誰がみたって愛して大切にしてくれている。
王妃様は愛されていない、ただの家格を見た政略結婚なのもわかっている。お兄様二人は腹違いといえど私の事を溺愛している。それもあって王妃様はお母様の事も私の事も憎み妬んでいいるのよね。
心残りはお父様の体調だけ…神様、命だけはお救いください…
そしてお兄様一刻も早く戻ってきて…最後に一目空いたかったけれど仕方ないわね。