16話 不死生物の全面戦争
気が付いたら兵隊はいなくなっていた。俺が死んだのを確認して帰ったんだろう。ふふふ馬鹿め。
スッキリした気分で大通りに出ると、なにかが騒ぎになっているのを見つけた。
「おい。これは何の集まりだ?」
「あ?山の龍を狩る部隊が今日出発するらしいんだ。急だよなぁ。」
なんだって?!
いくら何でも早すぎる。龍を狩るなんて一流軍隊でも難しいものをこんな急に。とにかく急がなきゃ。
俺は急いで水ノ柱組へ走った。
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八方塞がりだと思った俺はすべての事情を組長に話した。
「なるほどなぁ。だからテスト内容を言った時の反応がおもろかったのか。」
「え。そうですか?」
「ああ。ポーカーフェイスは大事だ。話をする上で相手が何を考えているか。自分ならどうするか。相手の性格の穴は何か。よく考えなきゃいけない。」
相手の性格...リーコンさんは大胆な性格だから嘘も信じそうだ。でも純粋な人を騙すのはいけないことだ。炭爺が言ってた。
「よっしゃ。ここは水ノ柱組に任せろ。」
「えっ?」
「全面戦争だ。」
「く...組長?!今軍のやつらと真正面から戦うのはリスクがありすぎる!組が潰れますよ?!」
「もちろん変装するさ。炎ノ柱組にな」
まさか...
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「白龍はこの先だ!全軍陣形を保ったまま進軍だ!」
軍や金目的の冒険者、奴隷や一般人もいる。今から殺すのは...軍だ。
「隊長!右前方!炎魔術のような物が見えます!詠唱中でしたら敵襲です!」
ファイアーボール!
「...って弱魔法のファイアーボールか。魔物かよぉ。よし。盾兵が攻撃を受けて弓兵が狙撃せよ!傷を負った者は作戦通りに!」
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俺の権勢の一撃でだいぶビビったな。これならいけそうだ。
「おいアレイ。まさかお前...|溜め撃ち《チャージ&ファイア》をやってないのか?」
「なんですかそれ?」
「おまっ。え?溜め撃ちなしでその威力ってマジで言ってんのか。」
溜め撃ち。炭爺もそんな話はしてなかった。
「は...はは。とりあえず今メイン部隊はファイアーボールをチャージしてる。お前は早く引け。」
今回の作戦はシンプルな成りきり作戦。炎ノ柱組の服を着たカカシを遠距離に立てて、炎属性の攻撃を茂みから乱射。場は混乱して俺が白竜を逃がす。水ノ柱組は炎ノ柱組に罪を擦り付けて、ドラゴンゲット。一石二鳥。
「よし。発射!」
開戦の合図と共に、炎が茂みから発射された。ここまでやってくれるは思わなかったな。
俺はドラゴンがいた場所へと急いだ。
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「おーい!白竜!」
「アレイ。また来たのか。妹はやらんと言った。殺すぞ?」
げ、ドラゴン兄。
「ちち...ちがいます!敵が来てるんです!早く逃げましょう。向こうであなたを殺そうと軍隊が迫ってきています。」
「フン。下等な人間どもなんて俺一人で蹴散らしてくれる。」
「軍と冒険者。それと一般人も。とにかく大量の兵士がいたんです。早く逃げないと」
「...お前は人間だから知らないのか。力の使い方をな。」
...!
「波動!」
ドラゴンは手を空中に上げると、木に向かって「なにか」を撃った。「なにか」は青黒く、一直線に木に飛んで行き、当たった。すると、木は内部に爆弾があったかのように破裂し、倒れた。
「おお。どういう魔法ですかそれは?」
「これは魔法とかいう馬鹿な物ではない。」
えっ。
「はぁ。細かく教えたいところだが...。どうやら敵が周ってきたようだな。」
背後から回ってきた兵士の一人は悍ましい見た目をしていた。
腕は四本あり、彼の左右にはメイド?らしき者もいる。あんなガタイデカい奴軍にいたか?
「誰だ貴様!この白竜は俺のだぞ!」
「おっ目当てが白竜ってよくわかったな。あー人間兵がウロチョロしてるのを見るとそういうことか。まあガキは黙ってろっ。大人の事情さ。さあその白竜をこちらに。」
...俺は十歳だが舐められたくはないね。
「契約獣、そして奴隷の横領は法律で禁止されているはずだ。つまりこの龍騒ぎは違法!訴えてやる!」
法律とかは勉強してないから知らないが、結構一般的に有名な違法行為だからな。
「じゃあお前を嬲って殺せば解決だな。」
なんでそうなるんだ!コロスとダマレとナブルしか言語レパートリーないのか?
「俺はその辺のゴロついたガキとは違う!」
クスクス
四本腕の取り巻きが俺を嘲笑っている。メイド服のやつらは魔力探知でわかる。相当の魔力だ。
「ギトレイア。お前でもこいつは殺れる。殺した頭は食わせるとして...手足は研究にするかぁ?」
「了解しました。命令通り四肢を取って頭を捥ぎます。
波動術式 破壊球螺旋!」
メイドの両手に小さな魔力が溜まっていくのがわかる。あれは魔法か?にしては変だ。詠唱は俺と同じ無詠唱だとして、なにかがうごめいている。魔法で作った球体。おそらくあれを飛ばして戦うのだろうが、球体のなかでなにかが動いているのだ。
こうなったら先手必勝!凝縮した炎をイメージ!
「ファイアーボール!」
最近頻繁に使っているからだろうか。いつも二倍ほどの大きさのファイアーボールが出た。
対してメイドさんの魔法は一センチほど。女性には優しくしろと言われてきたが、これは犯罪者。しょうがない犠牲...
「ウジ虫が。」
メイドが小さな魔法を発射したと思った瞬間、俺の特大ファイアーボールは消滅した。
とんでもないスピードで俺に当たる...っと思ったら...?無傷だ。
「アレイ。あれは波動だ。」
ドラゴン兄!俺を庇って真正面からあの玉を。火傷のような傷だが、切り傷にも見える。
「波動?」
「ああ。波動というのは大昔の古代文明の人たちが使っていたものだ。威力は高いが、その分体力や生命力を使う。だから人は詠唱一つで良い魔法を選んだ。長寿の魔物や、世代毎に受け継いで何とか忘れ去られていない力なのだが...。あそこまで使いこなすとは。」
メイドはもう次の術に移っている。これじゃ体が持たない。どうにかしないと。
「強き者が使えば波動は最強の術だ。」
「な...なにか波動に対抗する術はないの?」
「波動は波動以外の力では抵抗できないとされている。」
俺は波動が使えないし...ドラゴン兄は満身創痍。俺は不死だが、ドラゴン兄は死なせちゃだめだ。
それによく見たら敵のメイドの数は五人。一人があんな馬鹿みたいに強いのにそれが五人。その化け物を使役している四本腕のやつすらいる。
「それでは...
波動術式 破壊球螺旋!」
もうだめ...か?
...な!
諦めかけていたその時目の前に少女が飛んできた。白色の髪をした少女はこちらを振り返ってニコッと笑った。どこか懐かしい笑みで振り返った少女は俺を抱きしめて言った。
「久しぶり。アレイ君」
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