11話 死なない生物はドラゴンを手に入れる
「ううぇうぇぇい?!お客さん!あいつはキンカ300枚の代物ってか無理でやんす!」
「なぜだ?」
「あいつは確か数十年前から存在するドラゴンで、まだ子供でやんすけど、とんでもない強さで、我々の組織でも手を焼いていて...それに今暴れてますよね?どうせ軍が殺してしまうでやんすよぉ。」
「じゃあ俺があのドラゴンを落ち着けさせたら無料でくれ。」
「っえ?」
「じゃあいいや。」
「いやできるんでやんすか?!」
「うん。頑張る。」
「確かに社長もなんでもするから誰か止めてくれーって言ってたでやんすけど......」
「じゃあいいね」
俺はサーカステントの中に入っていった。
ドラゴンの大きさは思ったより大きくなく、頭の大きさは馬くらいの大きさだ。馬よりはでかいが...。体は3メートルほどあってまあそこはドラゴンだ。鷲のような顔の骨格に純白の毛並み。美しいな。
「グルルルルル」
白いドラゴンはいつでもブレスを出せる様子でこちらを見つめてくる。
---ヤンス店員視点---
俺はヤンス。この王都で生まれて王都で育った平民だ。普通に親父の会社を引き継いで生きていこうと思っていたのだが、親父と大喧嘩をかましてこの奴隷業界に飛び入った。奴隷ってのは正直嫌いだ。臭いし、きもいし。何より人生詰んでて暗いやつらが多い。だがその中でも運よく優しい貴族に買ってもらえるやつもいて、そいつは俺より自由にしている。俺は奴隷以下なのかと何度も考える人生だ。
上司...ってか社長は俺を拾ってくれた本人だ。一番尊敬できる人で、ボーナスもくれるし飲み会などにも付き合っている仲だ。でも社長は俺とは違う。なぜなら社長は奴隷が好きだからだ。
人生が暗いとかそういうのじゃなくてシンプルに支配欲とかそういったものだ。
今日でこのサーカス店で働きだして5年になるが、こんな事件は初めてだ。
本当に大丈夫でやんすかね?
今心配しているのは出会いがしらにギンカを渡してくるどこかの坊ちゃまだ。最初は誘拐して金でも貰おうとしたが、どうやら見る目がありそうな感じだったので入れてやった。
だがこのガキは普通じゃねえ。値段を交渉してくる。アレイとか言ったか?確か王子はやんちゃな性格らしいが...こんなに頭はよくはないだろ。なんなら算術とかもできそうだ。
さて。
そんな謎の少年は暴れだしたうちの所有する中で一番強くて高価なドラゴを選んで買うとか言い出した。しかもいろいろ自分が有利になれるような条件を付けたんだ。即座に。正直俺はパニックになってて落ち着けられなかった。
ドラゴを失ったら俺はくびになる可能性すらあったのに。
そこの人の不安を逆手に取ったこの少年は天才だ。
っと思った俺が阿保だ。こいつ完全にドラゴンという生物をなめている。初手で歩いて近づいた。
「アレイさん!だめだ!食われるぞ!」
忠告するが止まらない。
「アレイさん!だめだ!そいつは白竜ドラゴ!だめだ!」
そしてドラゴが首を動かしたと思ったら周辺に血が飛び散った。
アレイさんの手が...ドラゴの爪で切り落とされたのだ
アレイさんは悲鳴一つ上げずに逃げる。攻撃をせずに攻撃をよけ続ける。す...すごい。
だがドラゴもしびれを切らして爪で切り裂く攻撃を始めた。結果はわかりきってる。アレイさんはもろに爪を食らって倒れた。まだ15にもなってないガキがあんなに頑張ってるのに俺は何してるんだか。
俺も戦おう。そうしよう。
「アレイさん!俺も加勢...」
声を掛けたらこちらを振り向きニコッと笑って...
アレイさんは食われた。丸のみだ。
「うわあああああアレイさああん」
何気に人が死ぬのは始めてみた。どこで誰が死んだ。誰に殺された。そんな話は腐るほど聞いた。
だが...見るのは初めてだった。
俺は逃げた。愚かにも逃げた。客を置いて。
外に飛び出し、社長に客の死を伝えると...
「お前!それがどれだけのことかわかっているのか!店の印象に関わるだろうが!もういい!クビだ!もともとそういう予定だったしな!」
5年も尽くしてきたのに...
俺は床に膝を落とした。
「ちくしょおおおおおお」
そのうち、軍が到着し、罠を仕掛けだした。どうやら爆弾罠ではめるようだ。
「社長...いや元社長。あんたの負けだ。あの爆弾でテントは終わり。サーカスもおしまいだ。奴隷業も立ち直れるか。」
「ヤンス。お前はもううちの社員じゃない。即刻立ち去れ」
今までは優しくしてくれたのに...俺は暗い顔で路地へ歩き出した。路地は湿気が強く体中から痒みがでる。
はっと水たまりを覗くと、これまで見てきたどの奴隷よりひどい顔をした人間が映った。
やっぱり人生なんてクソなんだなぁ。俺はどこから間違えてたんだろうか?あの社長についていったことか?奴隷業に手を染めたころか?
背後で強い爆発音が聞こえた。おそらく軍がドラゴ討伐を開始したのだろう。無駄だあのドラゴは強い。直感でわかる。
もう無理だ。死のう。腐った余生なんて...意味が。
大きな影が足元に映って上を見ると..
ドラコ...いや
シオニルド・ドラゴが空を飛んでいるのが見えた。失敗...いやあれは!一瞬ドラコの上に何か見えた。
まさか...
いやそんなわけないよな。あの状況で生きてられるはずがねえ。
!
シオニルド・ドラゴの上に載っている人が手を振っている。もう見えなくなったが...
「嘘だろ……あの状況で生きれるのかよ」
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