迷い犬ならぬ迷い竜?
パタン、と玄関の扉が閉まる音が響く。
「……、見捨てられたか、俺?」
「きゅ〜」
ひしっ、と俺の足にすがり付いたまま、小首を傾げる手のひらサイズ。
……、ちっ。
現状忘れて、ちょっと可愛いとか思っちまったじゃないか。
「どうしたもんかな」
へばりついている蒼いのを引き剥がし、目の前に持ち上げる。
……触れるんだよな。
幻とかだと思ってみたいんだが。
「おい?」
「きゅ〜?」
首根っこを捕まれてぶら下げられているのだが、気にしている様子はない。
短い翼をパタパタさせ、尻尾を振る。
「お前、親とかわからんのか?」
卵から生まれたばかりだとは言え、『り○○』(言葉にしたくない)だったらわかるのではなかろうか。
つかわかってくれ。
だが、きょとんと小首を傾げるだけなのを見て、問いの無駄を悟る。
「なんだかな……」
くぅ。
腹がなった。
当たり前だ。今日はクソ暁によるケンカに巻き込まれたのだ。
それなりに運動をしたのだ。
携帯で時間を確かめると、7時過ぎだ。
「父さん、今日は遅くなるんだっけ?」
先ずは飯だ。
母さんはまあ、しばらく帰ってきていないから、そろそろ帰宅するだろう。
てことは、父さんのところへ一直線だろうし。
そういう時は、父さんが連絡してくれるしなー……。
うん。
焼き肉食いたい。
肉、あったかな?
「きゅい?」
立ち上がった俺に、ヤツは小さい手で俺の袖を引く。
……俺は自分の欠点に、今更ながら気づく。
どうやら認めたくないことは、とことん現実逃避するらしい。
「あー、お前もくるか?」
「きゅい!」
言葉が通じているのか、嬉しそうに返答し、短い翼を広げパタパタヨロヨロと、俺の肩に飛び乗った。
「飛べんのかよ」
「きゅ〜きゅ〜」
茫然としたが、嬉しそうな鳴き声を聞き、何だか色々な気力が消えた。
ぐぅ!
俺の腹の抗議もデカくなってきたから、先に飯にしよう。