紗那Side:エピソード1
ユニークアクセス5000越えを記念して、紗那Sideを。
難しかった……(●д●)
時間がかかるかかる。
突然大気の色が変わった。
家の門を開こうとしていた私は、無意識に空を仰ぐ。
「紗那ちゃん」
母さまが庭側の窓から顔を出した。
「異界の空よ」
唐突に蒼く染まった空を指差し、駆け寄った私に平然と微笑んだ。
「『竜の渡り』ね。
この世界では珍しいわ」
この異世界出身の母は、色濃く血を継いでしまった私に色々実地で教えてくれている。
魔術然り、知識然り。
元姫君なだけに、気品のある作法とともに。
「あ」
チラりと、蒼く輝いた何かが見えた。
「玄関に廻りなさい。
追手の気配はないわ」
「はぁい」
にっこり、と王者の貫禄を持つ笑みを浮かべ、母さまは部屋の中に戻った。
そう、我が家族は追手持ち。
私の父さまは、元勇者で、母さまの世界を救った後、この世界にひっ拐ってきた。
私の母さまは、異世界の高貴なる姫で、元の世界の要だった。
しかし色々あって、父さまの手を取ってこの世界に駆け落ちしたのだ。
そんな二人の娘である私は、無駄に両親の才能と資格を継いでしまっている。
そのため家族全員が、魔法や幻獣、魔物がいるファンタジーな世界から指名手配されてしまっているのだ。
「お帰りなさい、紗那ちゃん」
「ただいま、母さま」
「今日はちょうど良いから『竜』について、お勉強しましょう」
いつ母さまの世界から強制召喚されるかわからない。
しかしいつか必ず喚び出される。
そんな私のため、母さまと父さまが代わる代わる、持つ知識を与えてくれる。
毎日学校後にまた魔術や剣術、帝王学を勉強。
命懸けだからやるけど……。
一応私、花の女子高生なのに。
ため息を交えつつ、勉強用の異空間移転魔方陣に向かう。
「今日はお茶しながら、幻術で色々な種族を見ましょう?
ケイトさんが心配して連絡してくるかも知れないもの」
頬を染めつつ言うバカップルぶりに、思わず半眼になってしまった。
「……はい」
リビングのソファーに掛け、疲れたので姿の擬装に使っていた装飾を全て外す。
「母さまの世界には、竜は何種類いたの?」
お茶を入れるためキッチンに立っていた母は、漆黒の髪を揺らがせた。
「数えたことはないわ。
異界渡りをする多くの幻獣がいて、何百年も私の世界で身体を休めていたもの。
私たちが知っている種族は、きちんと自己紹介してくれた方々だけ」
「ふーん」
やはり先に着替えてこよう、と席を立った瞬間。
パッキーーン!
クリスタルが砕けたような音が耳に響いた。
「あら?」
「って、貴生の家?」
明らかに現実の音ではない。
身構えたが、発生源が間近、貴生の部屋っぽい。
「キオくん、自覚ないものね?
困っているかも知れないから、行ってあげなさい」
手を拭きながら苦笑を浮かべる母を横目に、こめかみを押さえてしまう。
「あのバカ貴生!」
音の波が消えても、何らかのオーラが滲み出ている気配を感じ、紗那は立ち上がり、走り出す。
貴生の部屋に近づくにつれ、物凄くなる気配に慌てて部屋のドアを叩き開けてしまう。
「貴生ぉ!」
ゴン! と言う重い手応えを感じ、下を向くと部屋の主が伸びていた。
呆れ謝りつつ、顔をあげると。
……ばっちり、幼竜と目があった。
……竜? 地球に? それもこんなに小さいのに、凄い力? といか、見たことあるような?
茫然自失になっていると、父さま用着メロがなった。
「はい」
「紗那? 今どこだ?
貴生くんの家か?」
「え、うん。今きーちゃんの家」
すかさずきた突っ込みは軽く流し、仕事中の父さまの声に耳を澄ます。
「突然監視センサーがアラートを出すから驚いた。
貴生くんは?」
「えーと、ちょっとパニクってる」
「そうか。彼が原因なら仕方ない。主任の息子の暴走だ、と報告しておく。
助けてやりなさい」
「はぁい」
全く。貴生は羨ましいくらいに
「貴生だから」で解決される。
それにしても、あの竜、神竜に色具合が似てる気がする。
現実よりファンタジー寄りの人間のクセに、貴生は現実ばかり愛する。
いくつかの応酬の末、前から気になっていたこと、自分の事を聞いてみた。
見事に後悔したけれど。
……そんなに興味ないんだ、私の事。
幼なじみでもあるのに。
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、さっさと帰ることにした。
幼竜も、自分の気配をすごく頑張って消していたし、問題ないだろう。
それにしても、父さまと母さまに、なんて報告しよう?




