表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/32

襲撃 5

◇ ◇ ◇




蒼貴の鳴き声を契機に、俺はチャリの爆走スピードを早めながらタイミングを見計らう。


立ちはだかる黒マスクどもは、みるみる近づいてくる俺が止まる気配がないのに動揺し、一文字に並んでいた隊列をU字型に変えた。


頬を通り過ぎる風の冷たさが、刹那のタイミングを睨む俺の頭をクリアにしてくれる。


後ろを一瞬振り返ると、同士打ちを恐れたのか銃を持っていた腕は引っ込んでいた。


十字路になっている狭い道に寄せ、みっちりと塞いでいる車と、U字から両脇に並ぶ陣形になった黒マスクたち。

緊張に一瞬唇を舐め、黒マスクの一番端に差し掛かった瞬間、後ろタイヤのみ思いっきりブレーキをかけた。



キキキィ――!


甲高い金属音と慣性の衝撃が身体を襲う。


後ろタイヤが勢いに振り回されそうになった瞬間、重心を一気に後ろ側に流し、前タイヤを浮かす。


「っし!」


次の瞬間には自転車から飛び降り、「うらぁ」と飛び上がった自転車を勢いのまま、持っていたサドルごと車の向こうに放り投げた。


俺も勢いのまま数歩走ってから、走り幅跳びの要領で力の限り地面を踏み込む。


「よっ!」


ガッと思いっきり邪魔だった車を踏みつけ、再度翔ぶ。


この間、正味5秒程度だろう。


チラリと横目で確認した黒マスクたちは、腰を落とし構えた姿勢のまま俺の姿を追っているだけだ。


視線が合った(と思った)黒マスクの一人に、ふふんとせせら笑ってやる。


視線を前に戻し、落ちてくる自転車の右ハンドルを引っ付かみ、同時に地面に降り立つ。



ガシャガチャーン!

「ぎゅぎゅ!

ぎゅ~」



蒼貴の潰れた悲鳴が聞こえた気がするが、後回しだ。


元々凄いスピードを出して通っていたため、鞄の持ち手を左ハンドルに引っかかっけていた。


段差で鞄がカゴから飛び出さないようにだ。


今回の乱暴にもしっかり自転車に引っかかったままだった。

良かった良かった。


「行くぞ」


そのままバランスを取ってチャリに乗り、立ち漕ぎでスピードを出し始めた頃。


「何をしている?!

追いかけろ!」


「お前邪魔だ!」


「お前こそどけ!」


と言う怒号が聞こえてきた。


「バーカ。

遅いよ」


呟いた俺は、進路を大通りに向ける。


大概ああいう輩は、人目につく所では襲ってこない。


悲しいことに、それが分かる程度には経験がある。



それに。


「車とか。

足つく証拠品、サンキュー」


「きゅきゅー?」

――主、どうしたのだ?



若干引き気味な蒼貴に、満天の笑みを浮かべてみせた。



「ここからが、俺の本領だぜ?」



嬉々とした声色で答えた俺は、学校に向けて、ペダルを踏み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ