夢だと思いたい
見つめる。
見つめられる。
見つめる。
見つめられる。
……、紫色の瞳だ。
瞳孔が細長い。
……、蒼いな。日本の龍とは違って、ドラゴン?みたいだ。
……、ちっこいな。
なんで尻尾を振ってんだ?
……。
「これは夢だな!」
そうだ、そうに違いない!
暁に叩き起こされた所から夢なんだ!
人が平和に寝ていたのに、
「助太刀しろ」
と殺気立って叩かれた所から!
むしろ今は授業中だったりするのかも知れない。
起きろ!
起きろ、起きるんだ、俺!
目の前の物体から逸らせない視線を、無理矢理閉じた瞬間。
「貴生ぉ!」
バァーン!
勢いよく開いたドアに、思いっきり後頭部をヒットされ撃沈した。
ガン、ゴン!
我ながら、いい音がしたと思う。
「……イテ」
「キャー、ゴメン! やだ、避けてよ! 貴生でしょ!」
呟き床に転がった俺の首根っこはひっつかまれ、力一杯揺さぶられる。
「紗那! 酔う! 酔うから止めろ!」
「あ、ゴメン」
パッと離され、危うく床に再ヒットするところだった。
「ったく。伸びるだろ、このTシャツ、気に入ってんだから」
女のクセに、妙に力の使い方が巧く、首がキレイに絞まった。
とりあえず一番痛かった後頭部を擦りつつ、起き上がると。
最近見ない、金髪のままの心底驚愕している紗那。
その視線が己のベッドに向かっているのに、ようやく自分の状況を思い出す。
「……イテェ」
てことは、夢じゃないのか。
思わず重いため息をついてしまった。