放課後
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音で、はっと我に返った。
せっかく終わらせた英訳だが、教師が休みだったため自習になったため意味がなくなってしまった。
せっかく内職して終わらせたのに、残念だ。
仕方がないので、昨日プリントアウトしたコードを書き換えようとしていたのだが。
いかんせん学校内でPC使用は、基本禁じられている。
大目に見てくれるの昼休みくらいだ。
一応監視の教師がいたので、手書きで書き込んでいたのだが。
……後で再入力しないといけない手間が面倒だ。
課題も終わらせ、自習プリントも終わらせ、仕方がないので今日もらった課題も終わらせたが。
時間が余りまくったので、窓の外を見て魂を飛ばしてしまっていたのだ。
「くぁ~」
欠伸をしながら伸びをしていると、隣席のヤツが小さく笑った。
「本当にぼーっとしていたね。
二人のこと、心配?」
監視役の教師がプリントを集めに来たので渡してから、俺は首を傾げる。
「は? 誰を?」
「え?」
目に溜まった涙を拭い、ホームルームの後ですぐに帰れるよう準備しながら答えを待つ。
「天城さんたち。
戻ってきてないから」
「……あー、そういえば」
頭を掻きつつ、答えを探す。
てっきり暁のことだから授業をサボっただろう、と思っていた。
ついでに紗那は、暁に面倒な事を押し付けて(蒼貴を俺と同じクラスの暁に返却させるとか)、今頃帰ろうとしているだろう。
昼休みから帰って来ない事に気付いた瞬間、勝手にそう思っていた、何の疑問もなく。
「ホントに冷たいわねぇ」
バシィ!
と後頭部に衝撃が加わり、話題の主の片割れの声がした。
「何すんだよ」
「ちょっとくらい心配しなさいよね」
「何を?
学内だろ。
暁も一緒にいて、何を心配しろと?」
「……友達甲斐のない」
呆れた顔をしつつ、さりげなく蒼貴を手渡された。
「はは。
まあ。つか、暁は?」
「さあ?
ちょっとゆったりしてから戻るって言ってたけど。
ってあら、じゃあね」
入り口から担任が入ってきたのを見て、逆の出口から出ようとしたが、ふと紗那は振り返った。
「……?」
蒼貴を隠しながら鞄に仕舞いつつ首を傾げた俺に一瞬眉をひそめたが紗那だが、ひらりと手を振り何事もなかったように扉の向こうに消えた。
「おーい。
僕、職員会議あるから、早く終礼してくれー」
違和感につられて俺も眉をひそめてしまったが、担任の呑気な声がしたので前を向く。
「そうだ。
文化祭の出し物、考えておけよ~、明日のLHRで決めるぞ」
「「「うぉ~い」」」
やる気のないクラスの皆の返答に、担任(29歳、独身。ちっさい身長が悩み)が、ヘタれた表情を見せる。
「頑張ってくれよー。職員室で僕のクラス、ランク外なんだぞ」
情けない声に、クスクス笑っていた女生徒が手を上げた。
「はーい、きっちゃん!
先生たちが『出し物ランキング』に賭けてる、ってホントですか~」
「あ、いや!
そんなことないぞ。
先生はだな~」
「はーい、きっちゃん!
きっちゃんは頼んだら女生徒の恰好してくれますかー」
「お、やる気になんじゃん!」
「ナイス!
きっちゃん、やれよー」
ワイワイと盛り上がるクラスに、俺は紗那の奇異な行動は忘れ一緒に野次を飛ばして笑っていた。
紗那と蒼貴をしまった鞄をみて、目を細めた存在に気付かずに。