卵
「……」
俺が出来たのは、ただ沈黙することだけだった。
目の前にあるのは、俺のトレーナー。
母さんがどっかの国に行った土産だ。
我が母ながら、何をしているかよくわからんが。
父さん曰く、国際警察特殊部隊みたいなものらしい。
……、毎回思うが、絶対適当に誤魔化されてる。
家族ラブなのに、私を引き摺り廻すなぁ!
と帰る度に怒っているから、本人は嫌なんだろう。
……いや、思わず現実逃避してしまう。
うん。
ベッドに脱いで投げたトレーナーがある。
結構気に入ってる。
うん、どうでもいい。
そうじゃなくて。
……なんでフードの中に、わけ分からんものが入ってる?!
つかデカイ、蒼い!
人の手のひら大の大きさだぞ!
ついでによく見たら、ビミョーに動いてないか、アレ?!
って、落ち着け、俺。落ち着け。
パニクりはじめた思考を無理矢理宥め、俺は扉の前まで退いた。
妙に首が絞まるな、と思っていた原因。
帰りに仰け反った原因。
それがアレだろう。
あの妙に蒼くてデカイ、なんか卵に見えるアレ!
どうする?
なんか変なものが出てきたら。
いや、むしろ普通な訳ない。
だってデカイ。
蒼いんだぞ、さっきの空みたいにぃ?!
無意識に目を逸らしていた俺を他所に、事態はさっさと動いていた。
具体的にいうと……、殻にヒビが入りはじめたのだ。
パッキーーン!
ガラス、いやクリスタルの割れるような音が響き。
我に返った俺とソレは、じっくり視線を交わしてしまう。
「……竜?」
マジですか……?