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第2章 昼休み

思いっきり遅刻してこっそり学校に入った俺たちは、見咎められることもなく教室に入れた。


紗那は違うクラスだが、事前に連絡を入れていたから問題はないだろう。


問題、というか被害を被ったのは俺だ。


紗那は男どもにモテる。

だから一緒に重役出勤してしまった俺は、質問責めにあってしまったのだ。


質問の主は「暁と紗那は、やはり付き合っているのか!?」だ。


……、知るか!

つか自分で本人たちに聞けよ、と思う。


だが紗那には聞けず、暁には噂(学外の不良どもの元締めだという噂があるのだ)のため怖くて聞けないらしく。


……ウゼェ



加えて蒼貴が、教室のもの全てに興味深々らしく顔を出す。

そう、動くのだ。

……こんなファンタジーな生き物、動く所を見られるのは不味いだろ。


全く持ってマズイ。

俺には言い訳、できない。



昼休みに至るまで、短い休み時間は男どもの相手、常時蒼貴の好奇心防止と大忙しだった。


もう授業なんて、聞き流すしかない。


くそー、次の小テスト、どうしてくれようか。



「キオ」



机にぐったりしていた俺に、暁がのっそりと声をかけてきた。


俺の奮闘の半分、蒼貴の動きを阻止しようとしているのを、2つ向こうの窓際の席から涼しい顔をして高みの見物をしてやがった暁。

さすがに昼休みくらい、助けようと思ったのだろう。


「蒼貴、借りても良いか?」


……違った。

なんて友達甲斐のないヤツなんだ!


ある意味一目を置かれ、今日に限っては噂の中心人物の暁。

それゆえ周囲で聞き耳を立てられているが、さっぱり無視している暁へ、俺はもうため息をつくしかない。



ふと、暁が廊下に向け手を挙げたのを見て、暁の視線の先を見ると。


「貴生~」


小さく手を挙げた紗那が、ずかずかとクラスに入ってきた。


「暁?」

「ああ」



紗那の呼びかけに、暁は小さく頷く。


こいつら、本当に意思疎通がアイコンタクトだよな……。



「で、良いか?」

「あ~……」



ちらりと蒼貴を見下ろす。


動き回る奴を、俺は机の中に仕舞い込んでいた。

見下ろすと、ふちに足をかけていた蒼貴が妙に真剣な瞳で二人を見上げて頷いたように見えたので、まあいいかと俺も頷く。


「ああ。昼、食いながらにするか?」


蒼貴を手に立ち上がった俺だが、紗那が妙に困った顔をした。


「あ、ごめん、貴生。今日、一人で食べて?」


食堂に向かう俺の足がぴたりと止まる。


「あ?」


「僕は今日、買ってきてある」


コンビニの袋を顔の前に挙げた暁の顔を、まじまじと見つめた。

別に暁と二人で食堂に行くのは、約束していた訳ではないが……。

噂、否定できんぞ、二人とも。


「ごめんね」


申し訳なさそうに謝る紗那を見下ろし、俺も困った。

しかし、手の中で小さく動いた蒼貴の存在を思い出す。


つまり二人は、このファンタジーな生き物と、サシで対面したい、と。


「……」


まあ、気になるだろう。


俺だって二人のどちらかが、こんな生き物を突然持っていたら驚く。


生き物なのか、しっかり観察しなければ気がすまない。


二人もそんな感じなのだろう。

俺抜きである必要性があるのかはわからないが。



「まあいいけど。ほれ」



先ほど蒼貴も了承していたので、暁に手渡す。


一見ぬいぐるみだから、別にクラスメイトに見咎められても構いはしない。



「ありがと。行こう」

「戻ってきたら返す」


紗那も持参していただろう弁当を持ち、先に立って外に向かった。

暁も蒼貴を持って紗那の後ろについて行く。


二人を見送り、俺は一人食事をするのは暇なので、ノートPCを持って食堂に行こうとすると。



「お、おい! やっぱり二人、付き合ってるんじゃねえか?!」

「幼馴染だろ、お前! 知らねえのかよ!」

「くそ! あんな美少女が、あの悪名高い奴のモノなのかよ!?」


いきなりクラスメイトが詰め寄ってきた。



ぐわ! ムセェ! ウルせえ!!


つうか!


「俺がそんなこと、知るか~!」




くそ! 昼飯ぐらい、ゆっくり食いに行かせろよ!!!

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