秋と言えば
肉食じゃない。
草食でもない。
じゃあ、雑食か?
あ、いや。雑食なら、肉か野菜かと悩まず食べるよな?
うーん……。
ぐぅ〜。
頭を抱えた俺の腹が、すさまじい音で鳴いた。
……うん、先に俺の飯だな。
レタスとレモンをさっと洗い、ヤツをちょっと押し退けまな板を置く。
レモンを切りはじめて気がつくと、切った房の一つをヤツが覗き込んでいた。
手を止めて見ていると、まじまじと四方から眺めた後、おもむろにレモンに舌をつけた。
「ぎゅ! ぎゃぎゅー」
ジタバタと手足尻尾を振り回し暴れた。
「おいおい」
急いで平たい皿に水を入れて差し出そうと振り返ると。
またそぉっと、レモンに向けて舌を出しているヤツの姿が。
「オイこら! そんな刺激物、直接舐めるな」
首根っこを引っ掴み、テーブルにぽいっと投げる。
意外と上手に空中で翼を広げ、よたよたとテーブルに着陸したヤツを見届け、再び包丁を持ち……ふと思い出す。
「確か……梨が」
冷蔵庫にあったような。
もう一度包丁を置き、冷蔵庫を開け放つ。
「お、やっぱな」
これまたご贈答品っぽい木の箱を開けると、大きな梨が五個入っていた。
「ちょっとデカイか」
手のひらサイズのアレより少し大きい。
皮を剥き、四分の一に切り芯を取り除く。
梨を剥き始めてから、ピクリとコチラを熱心に見つめ尻尾を振り続けるヤツに、一つ差し出してみる。
「きゅ?」
ヤツは小さな両手を伸ばして受け取る。
16分の1の大きさにしてみたが。
……頭と同じくらいの大きさだった。
「き、ききゅ〜」
小さな舌で舐め、語尾にハートマークを付けていそうな歓声をあげ、かぶり付いた。
意外と鋭い牙が覗いたのにはびびったが。
ぽたぽたと滴を落としていたので、大きめの皿に梨とヤツをのせて置く。
ふう。
コレでヤツの餌も分かったことだし。
俺も平穏な夕飯にありつけるぜ……。