始まり
不思議な色の空だった。
その日俺は、クソ暁のケンカに巻き込まれていた。
ま、いつものことだったが。
とりあえず勝利し、巻き込んだ暁をついでに殴った帰り道。
秋も更けたとはいえ、妙に凍える風が吹き抜けたのに驚き、つい空を見上げたんだよな。
夕焼けで紅く染まっていた空が、何故か妙に蒼かった。
夜を映した色じゃあない。
なんて言うか……、よく宇宙から観る地球の蒼。
そんな色だった。
NASAの地球写真をPCデスクトップに設定するくらい、俺の好きな色。
しかし瞬きした次の瞬間には消え去った。
ちっ、残念。
空を見上げていた視線を戻し、両手をポケットに突っ込み、たらたらと帰路に着く。
なんかもう、寝たい気分だったのだ。
道の真ん中でも可能な気がしている、いや不可能なハズはない!
俺は出来る、俺に不可能はない……!
へろり、と立ち止まった瞬間、ズボ、グイ、とトレーナーフードを思いっきり引かれた。
身体がそっくり返る勢いで。
「……ぐぅ、このクソ暁ぁ!」
やりそうな友がいる。
むしろさっきの報復かぁ!
角を生やして振り返ったが。
「……?」
閑静な住宅路には、人の気配などなかった。
ここで気付かん俺もバカだったんだ。
いくら寝ぼけていたとしても……!
俺はそのまま、気のせいか、寝そうだったしな、と再びヘロヘロ帰路に着いちまったんだ。