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夏の終わる日
散文詩1編です
今回は視点JCっぽい
●夏の終わる日
「一番線に、まもなく電車が到着致します。
白線の内側までおさがり下さい」
プラットホームに落ちる長い影は
夕闇に吸い込まれていきそうな
夏の過ぎていってしまいそうな
沈んだまま瞼を閉じていた私の耳元で
ジジジと羽音が唸った
驚いて、あわてて払いのけると
もうこと切れそうな蝉だった
それは足下で もがきもがき
「助けて下さい」と言っている
遠くで踏切の音が聞こえ、
パアンと電車が風をあおりホームに着いた
「ドアが閉まります、駆け込み乗車はご遠慮下さい…」
そして動き出す電車の窓の向こう側
コンクリートのホームに取り残された
緑の中の、ビルの合間を縫うように
沈みゆく太陽に照らされている
死んでしまった茶色い蝉を
振り返る人はもういない