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なにかがたりないせかい

少女は焦っていた。

少し前に友達が話していた建物は多分ここのことを言うのだろう。そう確信していたから。


この建物は本来なら近寄ることすら許されない厳しい警備をされた場所であった。どんな人物であっても、例え村で一番偉い人物だとしても、それどころか大人であれば近寄ることを考えるのすら禁忌の場所であった。

それが何故なのか分からないが、大人であれば共通の認識であろうことはこどもの目にも明らかだった。

そんなところへ行こうと話していた友達は、無知故か、そんな禁忌を全く気にせず行こう行こうと騒ぎ立てていた。

挙げ句の果てに自分が行かないと言うと一人でも行くと言い出した。呆れて帰った自分もこどもだったのかもしれないが、今はそれどころではない。


昨日友達は家に帰ってこなかったらしいのだ。

多分あの建物に行って帰ってこれなくなったのだろう。

今は森の方に捜索隊が出ているのであの建物への道も警備は手薄だろう。

友達は昨日の祭りに乗じてあの建物へ行ったのだろうか。あの子は知らないのだ。あの建物へ行くことの意味を。


やっとの思いで着いた建物は無機質な石造りの大きな建造物だ。警備は普段からここに来るまでの道には居るが、ここ自体には居ないのである。何故かは分からないが効率が悪いと思う。ここの入り口と周り囲ってればいいのにと思うのは自分だけか。


中に入ると嫌な空気が体にまとわりつく。

早く友達を探さなければ。手掛かりがあると助かるのだが。


見つけた。

友達の服の切れ端だ。


その部屋には大きな穴があり、階下には瓦礫と足跡もあった。危険だが降りるしかない。


降りた先、少女の目は初めて見るもので視界が埋め尽くされた。

まず端が見え辛い程の広さの部屋に、そして目の前にある"ドア"と、周りには無数に居る"何か"

"何か"をこれと断定できる知識は少女の頭の中にはなかった。生き物であるのかさえ怪しい形状をしているものや、人型なのだが絶対に自分と同じ生き物とは思えない状態で立っているもの、それぞれがこちらを見て、蠢いているのが見えているから。


"何か"はこちらに来ることが出来ないようであった。

フェンスのような光る紐で囲われ、蠢いてはいるがこちらを見ているだけでそれ以上前に出ることはできないように見えた。


あまりにも多い情報量と恐怖に、少女はパニックになりかけたがそれどころでは無くなってしまった。

自分の目の前にあるドアの奥に、フェンスに囲われて居ない"何か"を見つけてしまったから。


先に見つけたのは幸いだった。他にもフェンスの外にいる奴がいるかもしれないし、逃げるなら今しかない。

一瞬視界の端に見えたドアには、”1”と数字が刻まれていた。


取り敢えず離れなくてはいけない。

階段か何か、上階に出る別ルートを探さないと。


音が出ないように小走りで逃げた先に階段があったが、それはフェンスで塞がれていた。

フェンスの横には、失敗と書かれている。


引き返そうとしたその時。

後ろからの衝撃で少女は壁に叩きつけられた。




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