笑顔で言われた。
「コーディ! どうしよう」
「リディア?」
アリスト魔法学園の廊下を歩いていた婚約者のコーディは、走り寄る私、リディア・パウエルに驚いて足を止めた。
「どうしたんだい? そんなに慌てて」
「私、退学しなくちゃいけないかもしれない」
「え、なんで?」
「うちの領地が経営危機になっちゃって、お金が底をついたらしいの」
「それは……本当?」
「うん、領地から手紙が届いて、学費が払えないって。ねぇ、コーディ。私どうしたらいいと思う?」
私は手紙を握りしめたまま、コーディを見上げた。
彼はやさしげな顔を心配そうに歪めて、私の髪を撫でる。
「落ち着いて、リディア。ご両親は今すぐに退学して戻ってこいって?」
「ううん、勉強は続けてくれって書いてある。でも学費が払えないなら、私この学園にいられない」
「確かに……。領地に関して国からの援助は?」
「分からない。手紙に書いてないわ」
「そうか。大変だな」
コーディはしばらくう〜んと考え込み、ポンと手を叩いた。
「それじゃあ、婚約は解消した方がいいね」
「え……?」
目の前でコーディが当たり前だとばかりに話し始める。
「だって僕たちが婚約したのは互いの家の利益を考えて、だろう?」
「……えぇ」
「君の家が没落するのなら、婚約の話自体も消えるんじゃないのかな」
自分の発した言葉に何度も頷き、彼は私から一歩離れた。
「残念だけど僕たちは縁がなかったってことだよね。今までありがとう。これからの君の人生を遠くから応援するよ」
彼は、さわやかな笑顔を浮かべたまま言い切る。
そして、私は婚約を解消された。