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第9話 魔王のペット

結局私はあのあとソファで寝てしまったらしい。

気がついたら、あれだけ出入りしていた魔物もクレバーも部屋からいなくなってた。

もう夕方らしい……。

書類を手にしていたアレクが起きた私に気がついて言った。

「エンジュ風呂に入れてやろう。」

私は赤くなってふるふると首を横に振った。

本当に言われた!

「私はひとりで入れるので、ひとりで入ってきまひゅ!」

私はあわててお風呂に走っていった。

だから、その時アレクが楽しそうに笑っていたことに気がつかず、私はからかわれたのだとは知らなかった。


そして、私がお風呂から戻ると、アレクは私をベッドに連れていき。

また私の髪を梳かし、髪が終るとブラシを変えた。

それから、私にクッションを渡して後を向くように言った。

翼にも丁寧にブラシをかけはじめた。


そしてしばらくして、慌てた声をあげた。

「羽根が……痛かったか?」

アレクは心配そうに私の顔を覗き込む。

見ると抜けた羽根を一本持っている。

抜いてしまったと思ったらしい……。

「それは生え代わりだから、大丈夫」

あまりにアレクが焦っているのが、可笑しくて私はくすくす笑った。

簡単に『人を殺す』というアレクが、羽根がたった一本抜けただけでこんなにうろたえるのだ。アレクは不思議だ。


アレクは抜け落ちた私の羽根を指でつまんでくるくる回した。

「綺麗だ……。」

綺麗な色がついていればそれに価値があったかもしれないが、私にはただ白いだけの何の変哲もないただの羽根だ。

私はうっとりと羽根をながめるアレクが理解できなかったが、自分の羽根が褒められるのは少し嬉しい。

私がフルフルと翼を動かすとアレクはそんな様子も嬉しそうにながめる。

何がそんなに気にいったのだろう?

しかもアレクはあとでその羽根を蓋ができる硝子瓶に入れて、まるで宝物の様に部屋に飾った。


私は忙しいアレクにブラッシングさせているのが、申し訳なくてついに言った。

「ブラッシングは自分でもできるから、もうアレクがやらなくていいよ?」

アレクは首を横に振った。

「こうやってエンジュのお世話するのがいいんだ。段々うっとりして寝てしまうエンジュが可愛いから癒されてる」

アレクは私の髪を撫でて、笑いながら言った。

私は赤くなった。逃げ出したいようなむずむずする気持ちがする。

こんな風に人から大切にされた事はなかった。

それに『可愛い』と言われたのははじめてかもしれない。

醜い、気持ち悪い、美しい、素晴らしい――『見世物』としての称賛ではない賛辞だ。

それはとてもくすぐったくて嬉しかった。

だけど……お世話を楽しんで居るなんて、私は本当にアレクのペットなのだ。

そして、アレクにブラッシングされていると、言われたようにうっとりしてきて……そして寝てしまった。

神殿に居る時からだが、最近なぜか眠くてしょうがなかった……。

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