第6話 名前
朝起きるとアレクは居なかった。
私はベッドでぼーっとしていた。
神殿のようにお世話係の女性が身なりを整えにやってくることもない。
どうすればいいかわからない。
しばらくするとサキちゃんが扉を開けて部屋に入ってきた。
「よく眠れた?朝ごはんを食べようか?」
サキちゃんは朝ごはんを一緒に食べながら、アレクとクレバーは今日は忙しいのだと話してくれた。
あと、この城にはたくさんの魔物が居て、ある程度の意志疎通はできるけど、話ができる程の知能があるのはほとんどいないとサキちゃんは 説明してくれた。
そして、クレバーはサキちゃんのツガイなんだって。
「アレクはエンジュと話ができる事がとても嬉しそうだから、たくさん話をしてあげてね」
サキちゃんはうふふふっと笑った。
アレクとはたくさんお話をした方が良いらしい。
大変だ……!
「でも私、今まで喋っちゃ駄目って言われてたから、あまり賢くないの」
「アレクは話ができれば何でも喜ぶと思うよ。エンジュに名前をつけてもらったのも、すごく嬉しそうに自慢してたもの」
わぁ……安直に名前をつけた事を私はちょっと後悔した。
でも他に思い浮かばなかったのだ。
「あと、エンジュの名前もアレクが考えたかったみたい。ごめんね。私が考えちゃって。変えてもいいよ?」
「ううん。私エンジュって名前、すごく気に入ってるから。サキちゃんありがとう」
私がお礼を言うと、サキちゃんはうふふふっと笑う。
「サキちゃんもクレバーにつけてもらわなくて良かったの?」
「いいの。サキュバスは1人しか居ないから、名前つけてもらうなんて、今まで考えた事もなかったよ。クレバーはアレクがつけたんだって。賢いって意味らしいよ。」
「ぴったりな名前だね~!」
「でしょ~?」
サキちゃんはうふふふっと妖艶に笑う。