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第4話 ごはん

お風呂に入ったら、次はご飯だとさきちゃんがテーブルのある部屋に連れてきてくれた。

でも、さきちゃんは配膳して部屋から居なくなった。

部屋にはマオーと私がふたりきり。

それなりに広い部屋だけどマオーはいわゆるお誕生日席に座り、私はテーブルの角を挟んで隣に座っている。


神殿ではお風呂もご飯も全部同じ部屋だった。

私は神様なのだから『神秘性が大事』だと神官はいつも言う。

だからお風呂とかご飯とかは格子の向こうの部屋からは見えないように仕切りがあった。

つまり『ホワイティアの時』は、ご飯を食べてるところは人には見られたら駄目と言われていたのだ。

だからいつも壁に向かってひとりでもくもくと食事をしていた。

なのに、マオーはご飯を食べている私をただひたすらにじーっと見ているのだ。

食べづらい……でも私はすごくお腹が減っている。

多分、私は一・二食くらい抜いている。

マオーに林檎をもらったから、動けているけどすごくお腹が減った。

本当は手づかみでがつがつ食べたいくらいなのだ。

でも、『人が見ている時は優雅に、美しく、神秘性が大事!』神官にずっと言われ続けていたせいで、私は美しく微笑みながら優雅に食べ物を口に運んでいる。

あと、私は人が居るときは『神秘性がなくなるからできるだけ喋るな』と言われていた。

話をすると実際の年齢よりも幼い……つまり馬鹿っぽいのだ。

今は私が話をしてもいいのかどうか尋ねられる神官が居ない。

気持ちを勝手に解釈して話をしてくれる神官も居ない。

口を開くと怒られるかもしれない。

だから私はできるだけ話さない。

だけどマオーは自分の食事に手をつけずに、延々とただ私を見ている。

あぁ、もう!食べづらい!

私は我慢ができなくなって言った。

「今は話をしてもいいのでしょうか?」

「かまわない」

マオーは嬉しそうにうなずいたが……。

「見られていると食べづらいです。マオーも食事をして下さい」

私は食事の手を止めて文句を言った。

「魔王は名前ではない。サキの様に私にも名前をくれないか?」

マオーは役職か、種族的なものらしい。

突然名前をつけろと言われてもでてこなかった。

私は神官やお世話係の女性の名前をしらなかった。

だから、神殿で何度も聞いた勇者の名前が真っ先に思い浮かんだのだ。

確かアレックスだ。

「じゃあアレクでもいいですか?」

マオーは嬉しそうに目を輝かせて頷いた。

「アレクも食事をしてください」

私が促すと、アレクは食べ始めた。

私はほっとして、食事を続けた。

「うまいか?」

アレクが嬉しそうに聞いた。

何故アレクがそんなに嬉しそうなのか不思議に思いながら、私はうなずいた。

食事の内容は神殿ほどに豪華ではなかった。

パンにスープにメインの肉。

普通の食事だ。

だけど……。

「ひとりで壁を見ながらする食事よりも、目の前で誰かが同じものを食べているのを見る方が美味しい気がします」

「そうだな」

アレクが嬉しそうに笑った。


――後で、アレクもいつも一人で食事をしているのだとサキちゃんに聞いた。

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