第3話 魔王城
「ここが魔王城だ」
ここはマオーのお家らしい。
ソファを見つけて私がそこに行こうとしたら、ライオン獣人の人に止められた。
「魔王様! ノミがいたらどうするんですか! ちゃんと洗って下さいよ! ちゃんと面倒みるって言ったでしょ?!」
ライオン獣人はマオーに注意しながら、私の襟の後を掴んだ。
首の後ろにもふもふの毛皮があたってくすぐったい。
流石に私にノミはいない……訂正するべきかどうか私が悩んでいると……。
部屋にはもう一人ひとが居て、その女性がハーイと手を挙げた。
「私が一緒にお風呂入ってくるよ?」
ほとんど下着みたいな露出の多い格好をした、胸にメロンが入ってるくらいのナイスバディな長い髪の女性だ。
ライオン獣人はすごく嫌そうな顔をした。
「サキュバスには頼みたくないな」
「えーっ? 魔王様が洗うよりよくない?」
えーっ?! 私がマオーに洗われるの?!
それはイヤ!
流石に男の人に風呂に入れられるのは困る。
私は青くなってふるふる頭を振った。
「サキュバス変な事すんなよ?」
「後でクレバーが遊んでくれるならしな~い」
ライオンさんはクレバーというお名前らしい。
クレバーさんはさっさと行って来いと私に手振りで示した。
私はうなずいて、サキュバスさんについて歩いた。
大広間の様な部屋から外に出る。
扉の外は長い廊下。
「お名前サキちゃんって呼んでもいい?」
私が聞くと、サキちゃんはうふふふふっと笑った。
「うん。そっちは何て呼べばいいの?」
神殿では『ホワイティア』と呼ばれてた。
「えーっと……どうしよう?……もう神殿で呼ばれていた『神様の名前』は呼ばれたくないの」
私が言うとサキちゃんはうーんと考えた。
「じゃあエンジェルだからエンジュはどう?」
私はエンジェルがよくわからなかったけど、エンジュという名前は良いと思った。
私は羽をぱたぱたした。
「うん。エンジュ。エンジュがいい!そう呼んで!」
◇◇◇
お風呂は神殿のお風呂と同じ造りだったので、次からはひとりでも入れそうだ。
サキちゃんは洗ってあげるって言ってくれたけど、私は固辞した。
サキちゃんは、ちえっといいながら湯船に入って行った。
だってね、ここで私は『ひとりでもお風呂に入れる』と証明しておかないと、次はマオーにお風呂に入れられるかもしれない!
それだけは絶対嫌だ。
断固としてひとりで入るぞ。
「髪が面倒……。サキちゃん後でハサミ貸してくれる?」
もうホワイティアじゃないからバッサリ切っちゃおう。
「え~? エンジュ髪切っちゃうの? せっかく綺麗なのにもったいないよ?」
「だって私の髪は手入れが大変なの。毎日いっぱいブラッシングしないと絡んじゃうから」
髪を洗うのも、乾かすのも大変なのだ。
神殿ではお世話の人が全部やってくれたけど、自分でやるのは大変だ。
それに、ここではマオーが私の係りみたいだから……難しいことは期待しない。